苦いお酒と甘いジュース

【皆、最後の飲み会は○日に決まりました!】

飲み会のグループにひなのからのメッセージが届いた。

皆それぞれリアクションを返す。

泣いてるスタンプだったり、元気良いスタンプだったり様々だ。

私もリアクションを返した。

手に持ったスマホにぎゅっと力が入る。

…ついに、この日がやって来てしまった。







「乾杯~!」

ざわざわとした居酒屋の個室でグラスの音が重なる。

皆、飲み物をそれぞれ口にした。

最初の飲み会から二年たった今でも、私の手には冷たいオレンジジュースがある。

甘くて、ほんの少し酸っぱい。

「皆、どこに就職するの?こっくんは県外でしょ?」

「うん」

ひなのが隣でお酒をちびちび飲んでいる穀人くんの方を見て言った。

「むぎちゃんは県内だったよね」

「うん」

「私も県内だから、また会えたら会おうね!」

ひなのの声に私は笑って頷く。

でも本当は、もう会わないだろうななんて思ってしまっている自分がいる。

本当に最低だ。でも



ーー君がいないと、意味ない。



私はチラッと穀人くんを見る。

この気持ちを、直接伝えられたら良かったのに。

何も知らない穀人くんは、いつも通りお酒を飲んでご飯を食べてる。

寂しそうな様子はない。

きっと、ひなのとは離れても連絡とるんだろうな。

酔ったふりをして、君に近づけたら良かったのに。

私は氷が溶けて生温くなったオレンジジュースを飲み干す。

これから先、君がどんな人に出会って恋をするのかさえ私は知ることができない。

私だけ、取り残されているみたいだった。

寂しさと余韻を残したまま、肌寒くなった空の下で私たちは手を振りあう。

「またね!皆、元気で!」

ひなのが明るく笑う。

その隣には、穀人くんがいる。

ふと目が合うと、穀人くんは軽く手をあげた。

「むぎなちゃん、バイバイ」

微笑んだその顔を、私は忘れることはないだろう。

でも、これが最後だから。

「バイバイ…」

久しぶりに呼んだ君の名前は震えていた。だけど、そんなの気にする様子もなく穀人くんは私に背中を向けた。

ーー振り向いてよ。

そんな願いは、届かない。

背中は、もう見えなくなっていた。

力なく右手が下がる。









「バイバイ…穀人くん」