「そろそろ帰ろっか」
ひなのの言葉で飲み会は終わった。
今日は一次会で解散か。
時刻を見るとちょうど零時を過ぎたところだった。
「なの、今日も乗るでしょ?」
「うん、ありがとう~」
当たり前のようにひなのは穀人くんの車に乗る。
しかも助手席。
ぎゅっと持っていた鞄の紐に力が入った。
ずっと立っているわけにはいかず、私も近くに止めた自分の車に乗り込んだ。
穀人くんの車のなかから、ひなのが手を振ってくる。
向こうが窓を開けてるから、私も運転席の窓を開けた。
「むぎちゃん、今日はありがとう!またね~」
「うん、またね」
チラッとひなのの後ろにいる穀人くんを見る。
穀人くんは軽く手を上げたあと、すぐに車を出した。
その姿にチクリと胸が痛む。
ーー私も、お酒が飲めたら良かったのに。
自分の車なんて持ってきてなかったら、穀人くんの車に乗れたのに。
運転する君を、隣で見てみたかった。
だけど、私の願いは到底叶うはずがないだろう。
私も穀人くんたちの後を追うように、車を出した。
信号で止まったときに見えた、二つ前にいる穀人くんたち。
でも、前の車が邪魔で中の様子なんてわからなかった。
「…何してんだろ」
ボソッと呟いた独り言は、車内に流れる失恋ソングに溶けていった。

