愛のある方へ

季節が変われば薄れていくような、そんな軽い気持ちであなたを好きになったわけじゃない。
時間が経てばそのうち平気になると、何度も自分に言い聞かせてきたけれど、そんな簡単なものではなかった。
あなたを好きだった時間は、思い出というきれいな言葉で片づけるには少し重すぎる。

一緒にいた日々は、もう終わったはずなのに、生活のいろんな場所にまだあなたが残っている。
歩いた道や、よく聴いた曲、ふとした言葉の言い回しまで、気づけばあなたに結びついてしまう。
思い出すつもりなんてなくても、勝手に心があなたを見つけてしまう。
たぶん心の底から好きだった人というのは、頭の中から消えていくんじゃなくて、日常のあちこちに静かに染み込んでしまうのだと思う。

だから簡単に忘れられないのも、仕方のないことなのかもしれない。
無理に前を向こうとしても、心だけがまだ同じ場所に座り込んでいる日があるし、もう戻れないとわかっているのに、どこかでまだあなたのいない世界に慣れきれずにいる。
あんなにちゃんと終わったはずなのに、私の中では何ひとつ終わっていないみたいだ。

一生忘れない、なんて少し大げさな言葉だと思っていた。
でも今ならわかる。
人は、本当に愛した人のことを忘れられないのではなく、忘れなくても生きていくしかなくなる。
あなたはもう過去なのに、私の心だけがいまだに過去のままで、だから今日も私は、ちゃんと今日を生きているふりをしながら、もう二度と戻らないあなたのことを、心のいちばん暗い場所で抱えたまま生きている。