愛のある方へ

前に街で、社会人らしき女性がペンを落としたのを目にした。
それに最初に気づいたのは、隣を歩いていたカップルの彼氏のほうだった。
彼はすぐに拾ったけれど、そのまま自分で渡すのではなく、いったん彼女に手渡した。
そして彼女が「落としましたよ」と落とし主に返していた。

その小さな場面に、私はすごく優しさを感じた。
落とした人を助けたい気持ちだけじゃなくて、隣にいる彼女の存在もちゃんと大事にしていたからだと思う。
変に誤解を生まないようにして、彼女の気持ちも置いていかない。
それでいて、困っている人にもちゃんと手を差し伸べている。
たった数秒のことなのに、その人の人柄がよく見えた気がした。

誰にでも優しい人は、たしかに素敵だと思う。
でも、ただ誰にでも同じように優しくすることが、本当の優しさとは言えないような気がする。
自分の隣にいる大切な人を不安にさせないこと。
守るべき関係をちゃんと守ること。
そのうえで、他人にもやさしくできること。
そういう人のほうが、ずっと信頼できる気がする。

優しさは、ただ配ればいいものじゃない。
向け方を間違えれば、誰かを傷つけることもある。
だからこそ、本当に優しい人は、優しさの使い方まで丁寧なのだと思う。
見せびらかすためでもなく、自分がいい人に見られたいからでもなく、ちゃんとその場にいる人たちの気持ちを考えて動ける人。

優しい人はたくさんいる。
でも、優しさを適当に使わない人は、そんなに多くない。
あの一瞬を見ただけなのに、ああいう人が恋人なら安心できるだろうなと思った。
本当に優しい人は、誰かを助けるときでさえ、ちゃんと守るべき人を守っている。

そして、自分もそんな素敵な人でありたいし、そんな素敵な人と出逢いたい。