♢♢♢
細長い通路を進んでいくと中庭のような場所に出た。
そこから屋根のある渡り廊下に入れるようになっていて、廊下は左右に続いていた。
右には二人の衛兵。そして左には一人の女性。
(このひとは……)
花嫁衣装の着付けに細かな指示を出していた中年女性だった。そして昨日、莎夜香に緇綺との婚儀を告げに来た者でもある。
お屋敷の〈女中頭〉と言ったところだろうか。
「カナエ、後は頼んだぞ」
緇綺の言葉にカナエと呼ばれた女性は頷いてお辞儀をした後、莎夜香に向かって言った。
「奥様はこちらへ」
カナエは莎夜香に左の廊下へ進むよう促した。緇綺は衛兵と一緒に右の廊下へ歩き出そうとしている。
「あの、閣下はどちらへ?」
莎夜香の問いに緇綺は立ち止まっただけで振り返りもせずに言った。
「私は忙しい。話があるのなら夜に聞く」
緇綺は足早に去り、その場には莎夜香とカナエだけが残された。
「お部屋までご案内いたします。こちらです」
莎夜香はカナエの言う通りに歩くしかなかった。やがて着いた場所は、それまで軟禁されていた部屋ではなかった。
「今日からここが奥様のお部屋となります。庭園と奥様用の湯殿もございます」
小庭や湯殿まである贅沢な造りに、莎夜香は驚いた。
室内はかなりの広さがあり高価な家具が置かれ、部屋の一角には茶器やお菓子まで置いてある。仕切られた続き部屋には新しい衣服や美しい装飾品が収納された支度部屋まであり、更に奥の部屋は寝室になっていて、天蓋付きの大きな寝台の上には仕立ての良い寝具が揃っていた。
小庭に目を向ければ開花の終わった椿と、これから咲くであろう牡丹の低木があり、今は薄紅色に咲いた梅が見頃だった。
「では私これで」
「えっ。ちょっと待ってください!」
一礼し部屋から出て行こうとするカナエを莎夜香は引き止めた。
「私はこの後どうしたらいいのですか?」
「それは……あの、申し訳ありません。私は奥様をこのお部屋へご案内するようにとしか言われてませんので。しばらくこのまま、お部屋でお寛ぎくださいませ」
莎夜香と目を合わせようともせず、身を縮ませながら答えるカナエの様子には違和感があった。
(この屋敷の女中たちは皆、なんだかとても怯えてるみたい)
なぜだろうと思いながらも、莎夜香は尋ねた。
「花嫁衣装のままでは寛げません。着替えを手伝ってもらえますか?」
「……で、できません。この国では婚礼の後、花嫁衣装に触れられるのは夫となった者だけでございます。ですから私がここでお着替えを手伝うことは許されません……」
「それじゃあ夜までこのまま?」
「はい、そうでございます」
「………わかりました。待つことにします」
カナエは一礼すると逃げるように退室し、莎夜香はひとりになった。
(もしかして、私のことがとても怖いとか?)
聆ノ国での扱いとは、なんだか違うような感じがしていた。それにしても、夜までこの格好とは。豪華だけど窮屈だから脱いでしまいたいのに。
午後から始まった婚儀だったが、まだ一時間ほどしか経っていないし、省略したことがいろいろあったらしい。通常通りなら来賓たちの挨拶や祝宴が夜まで続くのだろう。
(でもいくら忙しいからって、式の後に行く場所も告げずに花嫁を放置するなんて。……まぁ、でも。判ったかも)
緇綺はこの婚儀を形だけの儀式だと言っていた。かたちだけ。中身は空っぽ。想いなどない、というわけか。
べつに期待などしていない。
こんな立派な部屋を与えられたのだ。待遇はそれほど悪くない。
莎夜香は庭へ出るための戸を開けながら二匹の神霊虫に話しかけた。
「マオトにミカゼ。付き添ってくれてありがとう。しばらく自由にしてていいわよ」
こう言うと、二匹はふわりと莎夜香から離れて消えた。そして入れ替わるように、外からそよ風が吹いてナギが部屋に入り、莎夜香の肩に乗った。
「ナギもお疲れ様」
莎夜香が優しく頭を撫でてやると、ナギは頬に頭を擦り寄せてきた。
「あれから広間の様子はどうだった?」
「そうね、ほとんどが納得してない様子だったけど、あなたを哀れむ声も聞こえていたわ」
「私のことを?」
「そうよ。聆ノ国で冷遇扱いだったことも広まっていたし、生き残っても嫁ぎ先が黒曜家だなんて可哀想にだって。当主は残酷性のある冷血人間だという噂もあるようね。それであの当主はどこ?気配がないけどここにはいないの?」
「うん、そうなの。夜に話を聞くとか言って、どこか行っちゃったわ。それからここが私の部屋ですって」
「へぇー。意外といい部屋じゃないの」
「それでね、夜までこのままの格好であのひとを待つのですって」
「……ふぅん。それって話だけ?」
「え?」
「盃を交わして、妻になったんだから。夜に来て話だけ、なわけないでしょ。同衾を迫られたらどうする気?」
(ど……同衾⁉)
確かに今夜は初夜になるのだから。そういうコトがあってもおかしくない。───が。あまり考えてなかった。
「どうしよう、ナギ………」
「早いとこ逃げちゃおうか?」
「でも結界が張ってあるんでしょ?」
「ああ、それなんだけどね。ここへ来た頃よりも、結界がなんだか少しずつ弱まってるのよ。だから、あたしとミカゼとマオトの力を合わせれば、なんとかなりそうよ」
「本当に? でもどうしてかしら」
「……たぶん、私たち神獣や莎夜香が持つ神聖な力が働いてるのかも。でもそれがこの屋敷にとっていいことなのか、悪いことなのかはわからないけどね」
「神聖な力?私、何もしてないけど?」
「何もしてなくても巫女の血族には浄化の気が備わってるから。意識しなくても自然に放たれてる霊気があるのよ。そこに結界が反応したのかもね。まぁ、とにかく、ここにいても幸せになれそうにないわよ」
「そうね……。でもあのひとの神獣を見る力が気になるの。そのわけだけでも聞けたらと思って……」
彼が簡単に話すとも思えないけれど。
「仕方ないわね……」
ナギは人間のようなため息をついてから言った。
「わかったわ、同衾を迫られたらすぐにあたしたちを呼ぶのよ。大暴れするから、その隙に逃げ出しましょう。着替えもこっそり用意しておくのよ」
頷く莎夜香にナギは話を続けた。
「その後は山中にでも隠れて準備を整えればいいわ。封じて隠した金銭はあたしが管理してるから心配いらないわよ」
ナギの存在が心強い。なんとも頼りになる神獣である。
「ありがとうナギ。あ、そうだ。この花嫁衣装や宝石の飾りも売れば高値になるかしら」
「そうねぇ。宝石飾りは良さそうだけど、衣装は豪華過ぎて、なんだか疑われそうじゃない?」
「でも布地は良いものだから、捨てるのも勿体無いわ」
「じゃあ、思いきって裁断して小物にでも作り替えたら?莎夜香の刺繍作品、評判良かったもの。きっと良い値がつくわよ」
「そうか。それもいいわね」
その後、ナギは「もしものときのために休息をしておく」と言って、姿を消した。莎夜香は着替えを用意しておこうと、衣服が収納されている支度部屋へと向かった。
やがて夕方になり食事が運ばれてきた。
夜に向けて緊張しているせいか、あまり食欲がなかったが、ナギにしっかり食べておくようにと言われたので、莎夜香は頑張って完食した。
ほどなくして今度は、髪型や衣装の着崩れを直すためにカナエが再び訪れた。
支度が整うとカナエは「すぐに緇綺様がいらっしゃいますから」と言って去り、莎夜香はまたひとりになった。
緊張はしているが、ナギとミカゼとマオトの気配が近くに感じられて安心する。
───そして、
「入るぞ」
響きのある低い声と共に戸が開いて、緇綺が入ってきた。
その衣服は婚儀の正装ではなく普段着で、灰みのある青色の着物姿だった。
「妖たちは上手く気配を消しているようだな」
緇綺は部屋の中を見回しながら言った。
(だからアヤカシじゃないってば!)
声に出そうと思ったが、緇綺の鋭い眼差しに恐ろしさが勝り、身がすくんでしまった。
「なんだ、まだそんな格好をしてるのか」
花嫁姿の莎夜香に向けたその声は、嘲りを帯びていた。
「最初に言っておく。あなたとの婚姻は形だけのものだ。征服の証として生かし、煩わしい縁談避けにもなると考えた結果だ。私の妻になることで、何かを期待してもらっては困る。私はあなたに何も望むことはない。………が、あなたの異能には興味がある。結界が弱くなっているのは、あなたの力が働いているからか?」
喋りながら近寄り、緇綺は莎夜香のすぐ目の前にいた。
(なんだかとても禍々しい霊気を感じる。婚儀のときには感じなかったのに。………でも、恐ろしさの中に何か違うものもあるような気がする)
「あなたはどうして……」
「あなたは平気なのか?」
二人の声が重なった。
緇綺はなぜか居心地が悪そうな表情になり、部屋を出て行こうと向きを変えた。
「待って!まだ話は終わってません!私の話を聞くということでしたよね?あなたはなぜ神獣が見えるのですか? 私の母は巫女の家系で、それで……。でもあなたは?」
巫女の一族で異能を持って産まれるのは女性だけだと母から聞いている。莎夜香は自分と母以外の異能者を知らない。
異能者は自分の他にも存在するのだろうか。……このひとのように。
「あなたには関係のないことだ」
緇綺は冷たく言い放ち、部屋を出て行った。
細長い通路を進んでいくと中庭のような場所に出た。
そこから屋根のある渡り廊下に入れるようになっていて、廊下は左右に続いていた。
右には二人の衛兵。そして左には一人の女性。
(このひとは……)
花嫁衣装の着付けに細かな指示を出していた中年女性だった。そして昨日、莎夜香に緇綺との婚儀を告げに来た者でもある。
お屋敷の〈女中頭〉と言ったところだろうか。
「カナエ、後は頼んだぞ」
緇綺の言葉にカナエと呼ばれた女性は頷いてお辞儀をした後、莎夜香に向かって言った。
「奥様はこちらへ」
カナエは莎夜香に左の廊下へ進むよう促した。緇綺は衛兵と一緒に右の廊下へ歩き出そうとしている。
「あの、閣下はどちらへ?」
莎夜香の問いに緇綺は立ち止まっただけで振り返りもせずに言った。
「私は忙しい。話があるのなら夜に聞く」
緇綺は足早に去り、その場には莎夜香とカナエだけが残された。
「お部屋までご案内いたします。こちらです」
莎夜香はカナエの言う通りに歩くしかなかった。やがて着いた場所は、それまで軟禁されていた部屋ではなかった。
「今日からここが奥様のお部屋となります。庭園と奥様用の湯殿もございます」
小庭や湯殿まである贅沢な造りに、莎夜香は驚いた。
室内はかなりの広さがあり高価な家具が置かれ、部屋の一角には茶器やお菓子まで置いてある。仕切られた続き部屋には新しい衣服や美しい装飾品が収納された支度部屋まであり、更に奥の部屋は寝室になっていて、天蓋付きの大きな寝台の上には仕立ての良い寝具が揃っていた。
小庭に目を向ければ開花の終わった椿と、これから咲くであろう牡丹の低木があり、今は薄紅色に咲いた梅が見頃だった。
「では私これで」
「えっ。ちょっと待ってください!」
一礼し部屋から出て行こうとするカナエを莎夜香は引き止めた。
「私はこの後どうしたらいいのですか?」
「それは……あの、申し訳ありません。私は奥様をこのお部屋へご案内するようにとしか言われてませんので。しばらくこのまま、お部屋でお寛ぎくださいませ」
莎夜香と目を合わせようともせず、身を縮ませながら答えるカナエの様子には違和感があった。
(この屋敷の女中たちは皆、なんだかとても怯えてるみたい)
なぜだろうと思いながらも、莎夜香は尋ねた。
「花嫁衣装のままでは寛げません。着替えを手伝ってもらえますか?」
「……で、できません。この国では婚礼の後、花嫁衣装に触れられるのは夫となった者だけでございます。ですから私がここでお着替えを手伝うことは許されません……」
「それじゃあ夜までこのまま?」
「はい、そうでございます」
「………わかりました。待つことにします」
カナエは一礼すると逃げるように退室し、莎夜香はひとりになった。
(もしかして、私のことがとても怖いとか?)
聆ノ国での扱いとは、なんだか違うような感じがしていた。それにしても、夜までこの格好とは。豪華だけど窮屈だから脱いでしまいたいのに。
午後から始まった婚儀だったが、まだ一時間ほどしか経っていないし、省略したことがいろいろあったらしい。通常通りなら来賓たちの挨拶や祝宴が夜まで続くのだろう。
(でもいくら忙しいからって、式の後に行く場所も告げずに花嫁を放置するなんて。……まぁ、でも。判ったかも)
緇綺はこの婚儀を形だけの儀式だと言っていた。かたちだけ。中身は空っぽ。想いなどない、というわけか。
べつに期待などしていない。
こんな立派な部屋を与えられたのだ。待遇はそれほど悪くない。
莎夜香は庭へ出るための戸を開けながら二匹の神霊虫に話しかけた。
「マオトにミカゼ。付き添ってくれてありがとう。しばらく自由にしてていいわよ」
こう言うと、二匹はふわりと莎夜香から離れて消えた。そして入れ替わるように、外からそよ風が吹いてナギが部屋に入り、莎夜香の肩に乗った。
「ナギもお疲れ様」
莎夜香が優しく頭を撫でてやると、ナギは頬に頭を擦り寄せてきた。
「あれから広間の様子はどうだった?」
「そうね、ほとんどが納得してない様子だったけど、あなたを哀れむ声も聞こえていたわ」
「私のことを?」
「そうよ。聆ノ国で冷遇扱いだったことも広まっていたし、生き残っても嫁ぎ先が黒曜家だなんて可哀想にだって。当主は残酷性のある冷血人間だという噂もあるようね。それであの当主はどこ?気配がないけどここにはいないの?」
「うん、そうなの。夜に話を聞くとか言って、どこか行っちゃったわ。それからここが私の部屋ですって」
「へぇー。意外といい部屋じゃないの」
「それでね、夜までこのままの格好であのひとを待つのですって」
「……ふぅん。それって話だけ?」
「え?」
「盃を交わして、妻になったんだから。夜に来て話だけ、なわけないでしょ。同衾を迫られたらどうする気?」
(ど……同衾⁉)
確かに今夜は初夜になるのだから。そういうコトがあってもおかしくない。───が。あまり考えてなかった。
「どうしよう、ナギ………」
「早いとこ逃げちゃおうか?」
「でも結界が張ってあるんでしょ?」
「ああ、それなんだけどね。ここへ来た頃よりも、結界がなんだか少しずつ弱まってるのよ。だから、あたしとミカゼとマオトの力を合わせれば、なんとかなりそうよ」
「本当に? でもどうしてかしら」
「……たぶん、私たち神獣や莎夜香が持つ神聖な力が働いてるのかも。でもそれがこの屋敷にとっていいことなのか、悪いことなのかはわからないけどね」
「神聖な力?私、何もしてないけど?」
「何もしてなくても巫女の血族には浄化の気が備わってるから。意識しなくても自然に放たれてる霊気があるのよ。そこに結界が反応したのかもね。まぁ、とにかく、ここにいても幸せになれそうにないわよ」
「そうね……。でもあのひとの神獣を見る力が気になるの。そのわけだけでも聞けたらと思って……」
彼が簡単に話すとも思えないけれど。
「仕方ないわね……」
ナギは人間のようなため息をついてから言った。
「わかったわ、同衾を迫られたらすぐにあたしたちを呼ぶのよ。大暴れするから、その隙に逃げ出しましょう。着替えもこっそり用意しておくのよ」
頷く莎夜香にナギは話を続けた。
「その後は山中にでも隠れて準備を整えればいいわ。封じて隠した金銭はあたしが管理してるから心配いらないわよ」
ナギの存在が心強い。なんとも頼りになる神獣である。
「ありがとうナギ。あ、そうだ。この花嫁衣装や宝石の飾りも売れば高値になるかしら」
「そうねぇ。宝石飾りは良さそうだけど、衣装は豪華過ぎて、なんだか疑われそうじゃない?」
「でも布地は良いものだから、捨てるのも勿体無いわ」
「じゃあ、思いきって裁断して小物にでも作り替えたら?莎夜香の刺繍作品、評判良かったもの。きっと良い値がつくわよ」
「そうか。それもいいわね」
その後、ナギは「もしものときのために休息をしておく」と言って、姿を消した。莎夜香は着替えを用意しておこうと、衣服が収納されている支度部屋へと向かった。
やがて夕方になり食事が運ばれてきた。
夜に向けて緊張しているせいか、あまり食欲がなかったが、ナギにしっかり食べておくようにと言われたので、莎夜香は頑張って完食した。
ほどなくして今度は、髪型や衣装の着崩れを直すためにカナエが再び訪れた。
支度が整うとカナエは「すぐに緇綺様がいらっしゃいますから」と言って去り、莎夜香はまたひとりになった。
緊張はしているが、ナギとミカゼとマオトの気配が近くに感じられて安心する。
───そして、
「入るぞ」
響きのある低い声と共に戸が開いて、緇綺が入ってきた。
その衣服は婚儀の正装ではなく普段着で、灰みのある青色の着物姿だった。
「妖たちは上手く気配を消しているようだな」
緇綺は部屋の中を見回しながら言った。
(だからアヤカシじゃないってば!)
声に出そうと思ったが、緇綺の鋭い眼差しに恐ろしさが勝り、身がすくんでしまった。
「なんだ、まだそんな格好をしてるのか」
花嫁姿の莎夜香に向けたその声は、嘲りを帯びていた。
「最初に言っておく。あなたとの婚姻は形だけのものだ。征服の証として生かし、煩わしい縁談避けにもなると考えた結果だ。私の妻になることで、何かを期待してもらっては困る。私はあなたに何も望むことはない。………が、あなたの異能には興味がある。結界が弱くなっているのは、あなたの力が働いているからか?」
喋りながら近寄り、緇綺は莎夜香のすぐ目の前にいた。
(なんだかとても禍々しい霊気を感じる。婚儀のときには感じなかったのに。………でも、恐ろしさの中に何か違うものもあるような気がする)
「あなたはどうして……」
「あなたは平気なのか?」
二人の声が重なった。
緇綺はなぜか居心地が悪そうな表情になり、部屋を出て行こうと向きを変えた。
「待って!まだ話は終わってません!私の話を聞くということでしたよね?あなたはなぜ神獣が見えるのですか? 私の母は巫女の家系で、それで……。でもあなたは?」
巫女の一族で異能を持って産まれるのは女性だけだと母から聞いている。莎夜香は自分と母以外の異能者を知らない。
異能者は自分の他にも存在するのだろうか。……このひとのように。
「あなたには関係のないことだ」
緇綺は冷たく言い放ち、部屋を出て行った。
