《注視》
やってみるものだ。予想以上に大きな収穫があった。
引き続き井上が中川のデスクから資料を探してくれているとはいえ、アルバムと姿見に関する情報は全くもって足りなかった。情報を集めるにしても、今のご時世、闇雲に足を使えばいいというものでもない。そこでSNSに投稿してみた。
「〈急募〉『赤いアルバム』『古い姿見』『視線についてのインタビュー』どれか1つでも心あたりのある方! 和泉にご連絡ください! あなたのエピソードが記事になるかも?」
ぽつぽつと似たり寄ったりの小さな情報が集まる中で、赤いアルバムを3回見たという女子大学生・山﨑若菜から連絡があった。入院中だという彼女に直接訪問してインタビューしたい旨を伝えると、文章で説明するよりも会って話したほうが伝わりそうだから、と快諾してくれた。
DMである程度聞いていたが、真っ白いベッドごとわずかに上体を起こして横たわる山﨑はたしかに重傷だった。分厚い頚椎カラーと手足のギプスが痛々しいが、ケガ以外は元気ですよ、と笑っていた。個室だしご飯もおいしいし、案外快適に過ごしているそうだ。お見舞いに持って行ったフルーツゼリーは、とても喜んでもらえた。
インタビューを始めると、彼女はひとつひとつゆっくりと話した。きっと頭の中で整理したのだろう、簡潔に順序立てられていて、大変わかりやすかった。中川の資料と大筋は同じだが、複数回見ると現れるらしい集合写真の詳細を聞くことができた。アルバムその①③でも言及されていた女が、山﨑に何らかの干渉をしようとしたと考えられる。写真の背景が「木に囲まれたお寺か神社の参道みたいな場所だった」というのも興味深い。しかも夢では似たような場所を歩き続けていたという。さらに山﨑は「写っている人の年齢や性別はバラバラでした」とも言った。3回目に見たときにはアルバムその①③同様に穴が空いていたというが、周りに写った人物を確認した証言は初めてだ。これはおもしろくなってきたかもしれない。
山﨑の体調も考慮してインタビューは手短に済ませ、少々世間話をしておいとますることにした。また何か思い出したことや話したいことがあったらいつでもDMしてくださいね。俺がそう言うと、にこやかだった彼女は急に真面目な顔をした。
「あの、本当に気をつけてくださいね。お仕事だし、そういうわけにもいかないと思いますが、あまり深入りしないほうがいいと思います。たぶん、あのアルバムは危険です。他の方の証言もあるなら、私の頭がおかしかっただけではないってことになりますよね」
「そうなりますね。ありがとうございます。できるだけ気をつけて、いい記事書きますね」
それは楽しみにしています、と最後には目を輝かせていたのでまあ大丈夫だろう。早めに今回のインタビューを文字に起こして、石井や井上にも相談してみよう。
やってみるものだ。予想以上に大きな収穫があった。
引き続き井上が中川のデスクから資料を探してくれているとはいえ、アルバムと姿見に関する情報は全くもって足りなかった。情報を集めるにしても、今のご時世、闇雲に足を使えばいいというものでもない。そこでSNSに投稿してみた。
「〈急募〉『赤いアルバム』『古い姿見』『視線についてのインタビュー』どれか1つでも心あたりのある方! 和泉にご連絡ください! あなたのエピソードが記事になるかも?」
ぽつぽつと似たり寄ったりの小さな情報が集まる中で、赤いアルバムを3回見たという女子大学生・山﨑若菜から連絡があった。入院中だという彼女に直接訪問してインタビューしたい旨を伝えると、文章で説明するよりも会って話したほうが伝わりそうだから、と快諾してくれた。
DMである程度聞いていたが、真っ白いベッドごとわずかに上体を起こして横たわる山﨑はたしかに重傷だった。分厚い頚椎カラーと手足のギプスが痛々しいが、ケガ以外は元気ですよ、と笑っていた。個室だしご飯もおいしいし、案外快適に過ごしているそうだ。お見舞いに持って行ったフルーツゼリーは、とても喜んでもらえた。
インタビューを始めると、彼女はひとつひとつゆっくりと話した。きっと頭の中で整理したのだろう、簡潔に順序立てられていて、大変わかりやすかった。中川の資料と大筋は同じだが、複数回見ると現れるらしい集合写真の詳細を聞くことができた。アルバムその①③でも言及されていた女が、山﨑に何らかの干渉をしようとしたと考えられる。写真の背景が「木に囲まれたお寺か神社の参道みたいな場所だった」というのも興味深い。しかも夢では似たような場所を歩き続けていたという。さらに山﨑は「写っている人の年齢や性別はバラバラでした」とも言った。3回目に見たときにはアルバムその①③同様に穴が空いていたというが、周りに写った人物を確認した証言は初めてだ。これはおもしろくなってきたかもしれない。
山﨑の体調も考慮してインタビューは手短に済ませ、少々世間話をしておいとますることにした。また何か思い出したことや話したいことがあったらいつでもDMしてくださいね。俺がそう言うと、にこやかだった彼女は急に真面目な顔をした。
「あの、本当に気をつけてくださいね。お仕事だし、そういうわけにもいかないと思いますが、あまり深入りしないほうがいいと思います。たぶん、あのアルバムは危険です。他の方の証言もあるなら、私の頭がおかしかっただけではないってことになりますよね」
「そうなりますね。ありがとうございます。できるだけ気をつけて、いい記事書きますね」
それは楽しみにしています、と最後には目を輝かせていたのでまあ大丈夫だろう。早めに今回のインタビューを文字に起こして、石井や井上にも相談してみよう。
