《アルバム・姿見についてのインタビュー・文字起こし 22歳女性》
すみません。こんなところまでご足労いただきまして。投稿を拝見して、いても立ってもいられずにDMを送らせていただきました。お話ししたいことははっきりしているんですが、上手にまとめられなかったもので……。お恥ずかしい限りですが、このままで失礼します。
私、アルバムの実物を3回も見たんです。
初めて見た場所は、最寄り駅のお手洗いの個室でした。2ヶ月くらい前ですね。SNSで見たままの、赤いアルバムでした。ホラーとか都市伝説が好きなので、とても興奮しました。いろんなところで目撃談が出ていましたが、まさか自分の生活圏内で見られるなんて! 噂のとおり、写真はありませんでした。昭和何年何月・どこどこにて、みたいな書き込みはありましたよ。でもなんだか拍子抜けするくらい普通のアルバムでした。特別おどろおどろしい雰囲気なんかもなくて、ただの古めかしいアルバムっていうか……。写真ですか? はい、撮りました。事故を起こしたときにスマホも壊れてしまったので残っていませんが。
2回目は都内のアンティークショップです。アンティーク雑貨が大好きな友達がいて、大学の帰りに新しくできたショップに行ってみたいということで、私もついて行ったんです。その子が鏡とか額縁とか、そういう大きめの雑貨を見ている間に、店内を見て回っていたら端のほうにありました。古そうなアルバムは他にもあったんですが、どれもデッドストックって言うんですかね、古い新品でした。ハリー・ポッターの世界に出てきそうなものがいくつもあって、わくわくしながら手に取っていたら1つだけ値札のついていないものがまぎれていて。間違いありません。私が写真を撮ったものと同じ書き込みがあったので同じものです。本当に出没自在なんだって、ちょっと不気味に思いながらもまたページをめくりました。
唯一初めて見たときと違ったのは、アルバムの最後に写真が貼ってあったところです。その写真はなんというか……修学旅行の写真みたいでした。よく行き先でクラスごとに集合写真を撮るじゃないですか。あんな感じです。写っている人の年齢や性別はバラバラでしたけど。大人数で、木に囲まれたお寺か神社の参道みたいな場所だったと思います。ああでも、ちゃんとイスに座っているような感じだった気がしますね。どんな人たちだったか……細かく覚えていませんが、最前列の真ん中に座っていた、私より少し下くらいの歳の女の子がびっくりするほどきれいでした。女優さんかモデルさんかみたいな、あんな顔に生まれたかったなっていうような、100人が見たら100人が美人っていうような女の子です。長い黒髪に透き通るような白い肌、吸い込まれるような目力のある大きな瞳。鼻は高くて唇もふっくらしていて、同性の私から見てもとても魅力的でした。そんな彼女は真顔でまっすぐ前を見据えていて、写真を見たのと同時に目が合ったと思いました。美形の真顔って迫力がありますよね。そこで急にぞっとして、その場を離れました。その写真は撮ってないです。
その後くらいかな、変な夢を繰り返し見るようになりました。深夜にアルバムの最後にあった写真みたいな場所を歩き続ける夢です。永遠に歩いているような感覚で、立ち止まると知らない女の子の低い声で「止まるな」って。歩き出すまで何回も言われるんです。この夢を見て起きると、必ずものすごい寝汗をかいていました。シーツまでぐっしょりです。それで眠るのが怖くなってしまって、体調を崩しがちになりました。あんまりアルバムの写真と夢を気にしすぎたのかこんなこともありました。例のアンティーク好きの友達と古着屋さんに行ったときに、壁に立てかけてあった大きな鏡に例の写真の女の子がいたんです。信じがたいですが、その場には男性の店員さんと友達と私しかいなかったし、絶対あの子でした。思わず悲鳴をあげて、店員さんと友達にはすごく心配をかけてしまいました。申し訳ないです。え? 細長い長方形でふちが木製の古そうな姿見じゃないかって? そうです。なんでわかったんですか。
そうやって日常生活に支障が出るようになったので近所のクリニックにかかったところ、精神的な疲れだろうということで、心療内科に紹介状を書いてくれました。3回目に見たのは、いよいよ心療内科の初診に行こうとした日です。自宅マンションの駐輪場に駐めてあった私の自転車の前カゴに入っていました。ああ、私についてきている。そう思ったら胃がひっくり返りそうになるくらい怖くなって、アルバムを摑んで地面に投げつけたんです。アルバムは地面に開いて落ちました。少しでも自分から遠ざけたくて、息が荒くなるのを感じながら拾い上げました。乱暴に拾い上げたので、裏表紙だけ摑んでしまったのでしょう。最後のページが目に入りました。
写真は変わらずありました。ただ、全員の顔がはっきりと写っている傷のない写真だったのに、真ん中の女の子以外、顔がなくなっていたんです。塗りつぶしたのではなくてそこだけ焦げたように穴が空いて、生成色っぽいつるつるしたアルバムの台紙が見えていました。そして女の子は、満面の笑みをこちらに向けていました。
あとはDMに書いたとおりです。パニックを起こして大通りに飛び出し、トラックに轢かれました。頭は打ったし全身至るところを骨折したし、正直よく生きていると思います。もう1ヶ月も経つのにまだ入院生活です。でもあれから変な夢は見なくなりました。だいぶ痛い目に遭いましたが、それはよかったと思います。とはいえ、この病室を1歩でも出たらまたあのアルバムと女の子が私を追いかけてくるんじゃないか。そんな気がして怖いです。お医者さんに洗いざらい話したら、精神安定剤を処方してくれました。毎日飲んでいますが、効いているんですかね。体の傷が治るのは見てわかりますけど、精神って自分でもわからないものですね。
すみません。こんなところまでご足労いただきまして。投稿を拝見して、いても立ってもいられずにDMを送らせていただきました。お話ししたいことははっきりしているんですが、上手にまとめられなかったもので……。お恥ずかしい限りですが、このままで失礼します。
私、アルバムの実物を3回も見たんです。
初めて見た場所は、最寄り駅のお手洗いの個室でした。2ヶ月くらい前ですね。SNSで見たままの、赤いアルバムでした。ホラーとか都市伝説が好きなので、とても興奮しました。いろんなところで目撃談が出ていましたが、まさか自分の生活圏内で見られるなんて! 噂のとおり、写真はありませんでした。昭和何年何月・どこどこにて、みたいな書き込みはありましたよ。でもなんだか拍子抜けするくらい普通のアルバムでした。特別おどろおどろしい雰囲気なんかもなくて、ただの古めかしいアルバムっていうか……。写真ですか? はい、撮りました。事故を起こしたときにスマホも壊れてしまったので残っていませんが。
2回目は都内のアンティークショップです。アンティーク雑貨が大好きな友達がいて、大学の帰りに新しくできたショップに行ってみたいということで、私もついて行ったんです。その子が鏡とか額縁とか、そういう大きめの雑貨を見ている間に、店内を見て回っていたら端のほうにありました。古そうなアルバムは他にもあったんですが、どれもデッドストックって言うんですかね、古い新品でした。ハリー・ポッターの世界に出てきそうなものがいくつもあって、わくわくしながら手に取っていたら1つだけ値札のついていないものがまぎれていて。間違いありません。私が写真を撮ったものと同じ書き込みがあったので同じものです。本当に出没自在なんだって、ちょっと不気味に思いながらもまたページをめくりました。
唯一初めて見たときと違ったのは、アルバムの最後に写真が貼ってあったところです。その写真はなんというか……修学旅行の写真みたいでした。よく行き先でクラスごとに集合写真を撮るじゃないですか。あんな感じです。写っている人の年齢や性別はバラバラでしたけど。大人数で、木に囲まれたお寺か神社の参道みたいな場所だったと思います。ああでも、ちゃんとイスに座っているような感じだった気がしますね。どんな人たちだったか……細かく覚えていませんが、最前列の真ん中に座っていた、私より少し下くらいの歳の女の子がびっくりするほどきれいでした。女優さんかモデルさんかみたいな、あんな顔に生まれたかったなっていうような、100人が見たら100人が美人っていうような女の子です。長い黒髪に透き通るような白い肌、吸い込まれるような目力のある大きな瞳。鼻は高くて唇もふっくらしていて、同性の私から見てもとても魅力的でした。そんな彼女は真顔でまっすぐ前を見据えていて、写真を見たのと同時に目が合ったと思いました。美形の真顔って迫力がありますよね。そこで急にぞっとして、その場を離れました。その写真は撮ってないです。
その後くらいかな、変な夢を繰り返し見るようになりました。深夜にアルバムの最後にあった写真みたいな場所を歩き続ける夢です。永遠に歩いているような感覚で、立ち止まると知らない女の子の低い声で「止まるな」って。歩き出すまで何回も言われるんです。この夢を見て起きると、必ずものすごい寝汗をかいていました。シーツまでぐっしょりです。それで眠るのが怖くなってしまって、体調を崩しがちになりました。あんまりアルバムの写真と夢を気にしすぎたのかこんなこともありました。例のアンティーク好きの友達と古着屋さんに行ったときに、壁に立てかけてあった大きな鏡に例の写真の女の子がいたんです。信じがたいですが、その場には男性の店員さんと友達と私しかいなかったし、絶対あの子でした。思わず悲鳴をあげて、店員さんと友達にはすごく心配をかけてしまいました。申し訳ないです。え? 細長い長方形でふちが木製の古そうな姿見じゃないかって? そうです。なんでわかったんですか。
そうやって日常生活に支障が出るようになったので近所のクリニックにかかったところ、精神的な疲れだろうということで、心療内科に紹介状を書いてくれました。3回目に見たのは、いよいよ心療内科の初診に行こうとした日です。自宅マンションの駐輪場に駐めてあった私の自転車の前カゴに入っていました。ああ、私についてきている。そう思ったら胃がひっくり返りそうになるくらい怖くなって、アルバムを摑んで地面に投げつけたんです。アルバムは地面に開いて落ちました。少しでも自分から遠ざけたくて、息が荒くなるのを感じながら拾い上げました。乱暴に拾い上げたので、裏表紙だけ摑んでしまったのでしょう。最後のページが目に入りました。
写真は変わらずありました。ただ、全員の顔がはっきりと写っている傷のない写真だったのに、真ん中の女の子以外、顔がなくなっていたんです。塗りつぶしたのではなくてそこだけ焦げたように穴が空いて、生成色っぽいつるつるしたアルバムの台紙が見えていました。そして女の子は、満面の笑みをこちらに向けていました。
あとはDMに書いたとおりです。パニックを起こして大通りに飛び出し、トラックに轢かれました。頭は打ったし全身至るところを骨折したし、正直よく生きていると思います。もう1ヶ月も経つのにまだ入院生活です。でもあれから変な夢は見なくなりました。だいぶ痛い目に遭いましたが、それはよかったと思います。とはいえ、この病室を1歩でも出たらまたあのアルバムと女の子が私を追いかけてくるんじゃないか。そんな気がして怖いです。お医者さんに洗いざらい話したら、精神安定剤を処方してくれました。毎日飲んでいますが、効いているんですかね。体の傷が治るのは見てわかりますけど、精神って自分でもわからないものですね。
