名前だけでも忘れてください

(昼間。背景には公園らしきもの)

平堂:もしもし? ……いや、もう集合時間なんだけど。何してんの? なんで二人とも来ないの? は? 熱? ふざけんなよ。前もそう言ってたじゃん。体調管理ちゃんとしろって言ったよな?

(しばらく電話越しに言い争う声が続く)
(平堂、スマートフォンに八つ当たりするように画面を殴りつけながら電話を切る)

平堂:不病も浮等も来ないみたいです。せっかく漫才の練習しようと思ったのに……あいつらマジでクズ。まあいいや、いつかエピソードトークで話せるかも……。
今日はネタ書く時間にします。肝試しのネタ書きたいんですよねー。うまく三人でできる話にしないと……バランスよくセリフ考えるの、結構難しくて。
……一人でしゃべってても虚しいな、これ。撮ってる意味もないし……切るか。

(平堂、カメラに近づく。画面揺れ。ノイズ)

(暗い画面中央に薄汚れたワンピースの女。こちらを睨みつけている。音は一切なし。少しずつこちらに近付いてくる)

(ノイズ。画面が元の公園に戻る)

平堂:えー、なんだこれ。止まってる? あれ、まだ回ってるの? ……こうか。はーい、また三人で集まった時に撮りまーす。