『2月27日のサカキ』

次の日、全ての出品物は消えていました。

それ以来、共通する“違和感”を持った商品は出品されることはありませんでした。
気味が悪くなった私は、その後も「見回り御苦労様です。」の一言が頭から離れず、あの時購入した後に起きたかもしれないあらゆる恐怖を想像しては眠れなくなり、しばらくしてその巡回バイトを辞めてしまいました。

今日は2026年2月27日。あれから6年が経とうとしています。

あの一連の出来事を家族や友人に話しても、本気にはしてもらえず気のせいで済まされてしまうでしょう。
でもどうしても頭から離れないのです。今でも視界の端には、誰かが立っている姿が見えるのです。

このホラーコンテストに応募すれば、たくさんの怖い話に触れて来た方たちが読んでくれるはず。
ひょっとしたら何かしっくりくるような解決が見つかる可能性を私は期待しているのです。


──ここまで勢いで書いてしまったので、情報の過不足があるかもしれません。
そういえば実はひとつ、書き忘れていたことがあります。

最後に『榊』の出品を確認したとき、いつのまにか出品を「許可」されたようで榊は購入されていました。購入者によってコメントが記載されているのを見つけました。評価は『★1つ/非常に悪い出品者です』になっていました。コメントはこうです。


「榊と書いてありましたが届いたものは榊ではなく樒です。」


私はすかさず、その初めて見る漢字「樒」を調べました。


------------------------------------------------
シキミ(樒、梻、学名: Illicium anisatum)
マツブサ科シキミ属。仏事に広く使われ、関西地方ではしばしば仏前や墓前に供えられる。
毒性や独特の香りから悪霊除けや墓地の匂い消しとして使用され「悪しき実=しきみ」と呼ばれるようになったとも言われる。
榊に似た植物であるため、神棚などに供えないよう注意が必要。
------------------------------------------------


あの榊は、ではなかった。神の依り代となる縁起物ではなかった。仏前や墓前に供えられる悪霊除け。
不自然な逆さまの写真は「榊ではない」という意味が込められていたのでしょうか?
この『榊』の出品が全ての「サカキ」を繋げる役目を果たしたのは間違いありませんが、果たしてそれらを結びつけたのは、本当に神様の導きだったのでしょうか?
ここまでを書き上げた今、当時を振り返って5年ぶりにあのフリマサイトを覗いています。そして重大なものを見つけてしまったところです。


『最終値下げ価格:サカキカズイのマフラーです』(販売価格:37,998円)


6年前に出品されていた一連の出品物に間違いありません。あの日、どこを探しても見つけることができなかったはずの、最初のひとつ。出品日は2021年2月27日。5年前の今日です。しかも9分前に購入されているようです。
見るとコメント欄で吹き出しに囲まれた「…」が左から順々に点滅するアニメーションが表示されています。これは今まさに誰かがリアルタイムでこの商品のページにコメントを書き込んでいるということです。

私がこの文章を書いている瞬間、まさにPCの向こうで誰かがこのコメントを書いている。

しばらく「…」の点滅が続いた後、「ぽわん」という効果音がして吹き出しの中にコメントが表示されました。
どうやらコメントを書いていたのは購入者のようです。

『★5つ/良い出品者です:』
「この度は良い品をありがとうございました。まだ温かかったです。」

そして今。
その次の行に現れた吹き出しの中の「…」が点滅をはじめました。
ぽわん。


                                 終