『2月27日のサカキ』

いつもよりも早くなっている鼓動を自覚しながら、さっきの検索サイトで調べた「榊」の説明の続きを目で追います。

「……また、サカキの語源は、神と人との境であることから「境木(さかき)」の意であるとされる。」

境木!手袋に書かれていた漢字です。やはり気のせいなどではありません。『サカキカズイのマフラー』と『境木さんの右手の手袋』。どちらも同一人物のものという可能性が一気に高まりました。そして今回の榊。そして榊を指す漢字は「境木」だけじゃない。
頭がズクズクと鈍い拍動をはじめるなか、私は「栄木」そして「賢木」と冠した出品物がないかを調べることにしました。すると、やはりそれらは存在しました。


『【昭和ロマン栄木】懐かしのインスタントカメラ』(販売価格:12,008円)
『使用済み切符:賢木からの出品です』(販売価格:6,982円)


もし、今日この『榊』の出品に引っかかることがなければ、榊について検索することもなかったでしょう。そして、これらの漢字で出品されていてもきっと「サカキ」と読むには至らず、見過ごしていたことでしょう。意外にもこのときの私は、いくつかの点在する謎がひとつの線に繋がったことに、高揚感すら覚えていたのです。

『【昭和ロマン栄木】』を冠したインスタントカメラの説明文には

「昭和懐かしいインスタントカメラ。あと2枚ほど撮影ができますので、左目に映る景色と右目に映る景色を映すのもオシャレかもしれません。」

と書かれていました。こちらにも「#昭和ロマン」「#eyes」とハッシュタグがついており、それぞれを調べても関連商品に不審なものはありませんでした。
次に『賢木からの出品です』と記された使用済み切符のページを見てみると、タイトル通り、使用済みの切符の写真があり、説明文には

「賢木の足掛かり。」

とだけ書かれていました。
行先は高崎駅→脇野田駅。行ったこともない駅名でした。
上部には「乗車券(ゆき)」と印字されています。「(ゆき)」と書かれているということは往復切符だったということです。「(かえり)」はどうしたのでしょうか? 日付は2014年10月…日付は読めません。私は駅名を調べてみましたが、その駅は2014年に既に廃駅となっており、今は存在しない駅のようです。
出品はそれぞれ、佐賀県と福井県。文体もテキストの装飾もバラバラで、もちろんアカウント名も別です。どちらの説明文も不気味ではありますが私はなぜかこのとき、説明文の「足がかり」が言葉の如くこの一連の不気味な出来事を紐解くヒントになるのではないかと思ったのです。そこでフリマサイトではなく、普通の検索サイトで「2014年」「サカキカズイ」で検索をかけてみることにしました。ですが残念ながら、めぼしい情報は検索には引っ掛からず、その日は落胆の面持ちで業務に戻りました。