以上、三つの実験を行った。
最初の実験では、特定ウェブ広告画像を目視すると必ず「ナヅキ」を認識するのか、年齢や性別、所属などによる変化の有無について調べた。
結果としては、社員の属性に関係なく「ナヅキ」は共通のイメージを持つ存在であり、特定ウェブ広告画像を目視した人物は、例外なく存在を認めることがわかった。
また、「ナヅキ」の存在を否定した後、「おかしいのは自分である」という発言が見られ、自分に対し批判的な感想を持ち、業務への支障を強く危惧する傾向が高いことが窺えた。
二つ目の実験では、パソコンやスマートフォンの画面以外の媒体による目視での変化を見ていった。特定ウェブ広告画像をA4コピー用紙に印刷した場合、それを目視した社員は「ナヅキ」を認識することはなかった。
また、特定ウェブ広告画像を表示させたスマートフォンの画面を、鏡越しに目視した場合も、同様に「ナヅキ」は認識されなかった。
一方、特定ウェブ広告画像を表示させたパソコンの画面を、スマートフォンのカメラモードで映し出した状態で目視した場合、通常とは異なる「ナヅキ」を認識することが新たにわかった。
スマートフォンのカメラモードで間接的に特定ウェブ広告画像を目視した社員は、業務遂行能力が高いと認識されるはずの「ナヅキ」が、業務中にゲームをする、非を認めないなど、多くの問題行動を起こす社員であると証言したのだ。
これにより、日常的に特定ウェブ広告画像の目視を回避することが困難であり、「ナヅキ」の認識を阻害する方法の発見には至らなかったという結論を出した。
三つ目の実験では、特定ウェブ広告画像のリンク先が「曇り空と、草に覆われている隆起した岩壁の写真」(以下 「岩壁の写真画像」)であった場合、「ナヅキと共に写真の場所へ行った曖昧な記憶を持つ」ようになるが、必ずしもその記憶を持たないことから、その基準を探った。また、その実験の元となるインタビューをまとめた。
実験から、特定ウェブ広告画像のリンクを開き、「岩壁の写真画像」を画面上に表示させた人物に限り、「ナヅキと写真の場所へ行った記憶を持つ」ことがわかった。
リンクを開く行為をせず、既に画面上に表示れた写真を「見せてもらう」構図では、「ナヅキ」も「行った記憶」も生じないと考えられる。
他方、「ナヅキ」の存在を否定し、それを認めた後でも、一度「岩壁の写真画像」の場所に行った記憶が生じた人物がその記憶を持ち続ける理由は判明しなかった。
これら三つの実験から、「ナヅキ」及び「岩壁」という集団幻覚と呼べる現象に対し、物理的・技術的に対処することは困難であると考えられる。唯一それらを防ぐ方法は、「ナヅキを否定できる人材の確保」である。
岩壁の写真の場所へ行った記憶は曖昧であり、大きな支障を生んだ報告は現時点で認められない。また、リンク先が「岩壁の写真画像」である確率の低さからも、現状で最も問題視されるべきは「ナヅキ」を認識することで、業務へ悪影響が出ている点である。
しかしながら、「ナヅキ」はその存在を認識していない人物によって否定されることで、認識を改めることができる。従って、広告欄があると予想されるウェブサイトを表示させる際は、第三者に見えないよう工夫する、可能であるならば印刷するなど、全社員が特定ウェブ広告画像を目視しないよう心がけることが推奨される。



