m県s山市の悪政を告発します

2024年10月14日 投稿
 はじめまして。本ブログを開設しました。

 私は旅行が趣味で、年に数回、地方の景勝地を巡っています。特に秋の紅葉が好きで、有名な場所からマイナーな場所まで足を運んできました。仕事を辞めてから時間だけはあるので、平日の空いている時期を狙って出かけることが多いです。今回はm県s山市にある丸子湖を訪れたので、その記録を残しておこうと思います。旅行雑誌もしくは、ネットで見かけたのか、正直なところ丸子湖をどこで知ったのかよく覚えていません。けれども、行ってみたいという気持ちだけは前々からありました。

 丸子湖は周囲約四キロの小さな湖で、s山市の中心部から車で三十分ほど山道を登った先にあります。県道から湖に至る道は一本しかなく、途中から舗装が荒れてきます。ガードレールのない区間もあり、対向車が来たらすれ違いに苦労するだろうという程度の道幅です。紅葉の名所として一部では知られているという割に、アクセスが良いとは言えません。

 ただ、その道がまたよかった。山道に入ってしばらくすると、両側の木々が色づいていて、車を走らせているだけで紅葉のトンネルの中にいるような感覚でした。カーブを曲がるたびに木漏れ日の角度が変わって、フロントガラスに赤い光が差し込んだり、黄色い光に変わったりする。窓を少し開けると、冷たい山の空気と一緒に落ち葉の匂いが入ってきました。車内にラジオをつけていたのですが、山道に入ったあたりで電波が途切れて、そのまま切りました。エンジン音と風の音だけで走る。贅沢な時間でした。

 十月半ばの平日に訪れたこともあって、湖畔の駐車場には私の車を含めて三台しか停まっていませんでした。駐車場は未舗装で、砂利の上に適当に停める形式です。隅に自動販売機が一台ありましたが、電源が入っていませんでした。横に「冬季休止」と手書きの貼り紙があります。まだ十月なのに。このあたりは冬が早いのかもしれません。駐車場の脇にトイレがあって、こちらは使えました。ありがたい。

 駐車場から遊歩道に出ると、すぐに湖が視界に入ります。

 率直に言って、驚きました。

 アクセスの悪さや駐車場のさびれた雰囲気から、正直あまり期待していなかったのですが、湖そのものは見事でした。周囲の山々が赤と橙と、ところどころ黄に色づいていて、風のない日だったので湖面がそのまま水鏡になっていました。紅葉が水面にそっくりそのまま映っている。空も映っている。どこまでが実像でどこからが虚像なのか、ぼんやり眺めていると判別がつかなくなります。

 湖面をじっと見ていると、水の色が一様ではないことに気づきます。岸に近い部分は浅くて底の砂利が見えるのですが、中心に向かうにつれて色が急激に濃くなり、湖の真ん中あたりはほとんど黒です。最大水深十八メートルだそうですが、その深さを目で見て感じるのは初めてでした。きれいなのに、中心だけは覗き込みたくない。そういう湖でした。

 地元では「鏡湖」とも呼ぶそうです。湖畔の案内板に由来が書いてありました。

丸子湖(通称:鏡湖) 周囲約4.2km、最大水深18m。古くより「鏡の湖」と呼ばれ、風のない日には周囲の山々を鏡のように映すことからその名がついたとされる。湖畔にはモミジ、ハゼノキ、イチョウなどが自生し、例年10月中旬から11月上旬にかけて紅葉が見頃を迎える。 s山市観光協会

 遊歩道は湖をぐるりと一周できるように整備されています。木々のトンネルのようになっている箇所があり、頭上から赤い葉が降ってきます。足元は落ち葉の絨毯で、歩くたびに乾いた音がしました。モミジが多いのですが、ところどころにイチョウが混じっていて、赤の中に鮮やかな黄色が挟まる。遊歩道の上にイチョウの葉が一面に散っている場所があって、そこだけ金色の道になっていました。思わずしゃがんで写真を撮りました。

 ところどころにベンチがあり、一つに年配の夫婦が腰を下ろして湖を眺めていました。お二人ともダウンジャケットを着て、水筒のお茶を飲んでいる。会釈をすると、にこやかに返してくれました。ご主人が「今年は色づきがいいねえ」と奥さんに話しかけているのが聞こえました。

 観光客が少ないぶん、静かです。聞こえるのは自分の足音と、ときおり湖面を渡る風の音、それから鳥の声くらい。モズの高い声がして、姿を探すと、湖畔の枯れ枝のてっぺんに一羽止まっていました。こういう場所が好きです。有名な紅葉スポットはどこも混み合いますが、ここは穴場だと思いました。

 四分の一周ほど歩いたところに東屋があり、そこから湖の全景が見渡せました。対岸の山の斜面が一面の錦で、それが湖面にもう一つの山を作っている。しばらく立ち尽くして眺めていました。写真も撮りましたが、実物の色をそのまま記録するのは難しい。目で見た鮮やかさの半分も写っていない気がします。

 水鏡がきれいすぎる、と思いました。他の湖でも紅葉の映り込みは見たことがありますが、ここまで完全な反射は初めてでした。湖面がほぼ完全に静止している。風があるはずなのに、水面にはさざ波一つない。

 東屋に座って、しばらく湖を眺めていました。のんびりした時間でした。ベンチの木が温かくて、日差しが気持ちよかった。鳥の声を聞きながら、ぼうっとしていたのだと思います。

 立ち上がったとき、少し足がふらつきました。東屋の柱に手をかけて体を支えました。時計を見ると、遊歩道を歩き始めてから四十分以上が経っていました。東屋に着いたのは十分ほど前のはずです。居心地がよくて、つい長居してしまったようです。

 あの湖を見ていると、自分が何者であるかなど忘れてしまいそうになる。そう思いました。不思議な場所です。

 遊歩道をさらに進もうかと思ったのですが、時間も遅くなってきたので、来た道を引き返すことにしました。北側の遊歩道を歩いて駐車場に戻りました。
 帰りがけに、行きに見かけた年配の夫婦がまだ同じベンチに座っていました。奥さんのほうが手を振ってくれたので、立ち止まって少し話しました。

 「きれいでしたねえ。あなた、初めて?」
 はい、と答えると、奥さんは嬉しそうに「去年初めて来て、今日で三回目なの。ここは混まないのがいいのよ」と言いました。ご主人が「最初は俺が見つけたんだよ。釣りで来てたの」と口を挟みました。「釣りはどうなのよ」「いや、釣れないんだけどね、この湖は。魚はいるんだけど、なかなか。でも景色がいいからいいかなって」。奥さんが笑っていました。

 「一周したの?」と聞かれたので、北側だけですと答えました。「南のほうは道がちょっと荒れてるからね。でもあっちもきれいよ。来年はそっちも歩いてみたら」。お二人に挨拶をして、駐車場に戻りました。

 帰りの山道で、県道に出る手前に小さな直売所がありました。無人販売です。木の台にビニール袋に入った野菜が並んでいて、料金箱に百円を入れる方式。しいたけと小松菜を買いました。しいたけは肉厚で、帰ってから焼いて食べたらおいしかった。

 帰宅後、丸子湖のことが頭から離れませんでした。あの水鏡。あの静けさ。

 紅葉のきれいな場所はこれまでもたくさん見てきました。京都の東福寺、日光のいろは坂、青森の奥入瀬渓流。どこも素晴らしかった。でも丸子湖は何かが違った。規模では全く及ばないし、アクセスもよくない。なのに、あの湖だけが妙に鮮明に記憶に残っている。目を閉じると、湖面の色がそのまま浮かんでくる。水面に映った紅葉と空。あの完全な静けさ。

 撮った写真を見返しましたが、やっぱり実物の半分も伝わらない。スマホの画面に映る丸子湖は、きれいだけどただの湖です。あの場にいたときの、空気ごと包まれるような感覚が写真には写らない。

 夜、布団の中で、あの東屋から見た湖の全景を思い出していました。対岸の山。水面に映るもう一つの山。そのまま眠りに落ちたのですが、夢の中でも湖を見ていた気がします。

 また行きたいと思いました。来月あたり、もう一度行ってみようと思います。紅葉のピークは十月下旬から十一月上旬らしいので、今回はまだ少し早かったかもしれません。次は湖を一周してみたいです。あの夫婦が「南のほうもきれいよ」と言っていたので。

コメント欄
名無しの旅人 2024/10/15 09:23 丸子湖、去年行きました。紅葉はきれいですよね。もう少し奥に歩くと南側に回れるんですけど、そっちのほうが人が少なくていいですよ。ただ、なんか古い建物がありました。

s山在住 2024/10/15 11:48 あのへんに子供のときに家族で泊まったホテルがあるんです。もう20年以上前ですけど、湖が窓から見えてきれいだったのを覚えてます。まだあるのかなあ。

sss 2024/10/15 14:07 s山市在住です。丸子湖いいですよね。南のほうにある建物は元ホテルで、もう何年も営業してないです。地元ではあんまり近寄らないほうがいいって言う人もいますね。

管理人2024/10/15 18:40 コメントありがとうございます。南側には行かなかったです。古い建物があるんですか。s山在住さん、ホテルがあったんですね。次回行ったら見てみます。sssさん、「近寄らないほうがいい」とはどういう意味でしょうか。

sss 2024/10/16 01:12 すみません、あまり詳しくは書けないです。ただ、あのホテルの人はいろいろあったみたいで。