あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

 優凪は目を丸くした。初めて見る鳥だ。インコを大きくしたような形で頭から胸元にかけて赤く、体は緑、翼と尾羽は青い。(くちばし)は黄色くて、目のまわりには赤い縞模様があって薄気味悪い。

「こいつはベニー。西洋のあやかしで、噛まれると大ケガするから近付かないように」
「オオケガ! アハハハハ!」
 大きな鳥が人のようにゲラゲラと笑う姿が不気味で、優凪は眉をひそめた。

「聞いていると思うが、俺はあやかしを研究している。本館にもあやかしがいるから近づかないように。万一があるかもしれないからね」
 にたりと笑う彼にぞっとした。きっと、覗いたら命はないぞ、という脅しだ。弟もグルだろうか。

 殊勝に頭を下げて部屋を出ると大きく息をつく。
 優凪はまず、離れの中を確認した。

 玄関から入って右側にさきほどの応接間、隣に彼の書斎。左側に彼の寝室、女中のための部屋、一番奥に台所とお風呂場がある。厠は外で、渡り廊下でつながっている。
 台所は西洋風に整えられた最新式だった。輸入されたオーブンと一体化したガスレンジがあり、流しには水道がある。

 とりあえずは昼食の準備だ。
 水道もガスレンジも折辺の家にもあったから使い方はわかる。が、食料がどこにも見当たらない。
 彼のいた部屋にとって返し、ドアをノックする。少年がそうしたように返事を待たずにドアを開けると、どさどさっと本の落ちる音がして、時雨がのっそりと顔を覗かせた。

「……なんだ、君か」
 ずれた眼鏡を直し、時雨が不機嫌そうに言う。

「お食事の準備はどうしましょう、ご主人様」
「ご主人様?」

「旦那様とお呼びしたほうがよろしいでしょうか」
「旦那様!?」
 また驚いたあと、彼は眉間に皺を寄せた。