あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「あなたが女中か。俺は帯刀時雨だ」
 男の口元が歪んだ。笑ったのだ、と察した優凪はぎこちなくお辞儀をした。

「蕗藤優凪です、本日よりお世話になります」
「彼女は操妖の一族、蕗藤の娘だよ。兄さんのために探したんだ」
 優凪は少年に警戒の目を向けた。話がおかしい気がする。

「操妖ができるのか!?」
 時雨が身を乗り出し、また本がいくつか落ちた。

「私は習っていないので無理です」
「だったら一般人じゃないか」
 時雨は興味をなくしたように本の山に沈んだ。

「まったく……紹介したから僕は帰る」
 少年は呆れたように部屋を出て行った。

 彼らは普通じゃない気がする。疑問は尽きないが、とにかく。
 優凪はうずうずした。掃除しがいがありそうな部屋だ。

「掃除をしたいのですが、お道具はどこに?」
 声をかけると、本の山から顔が覗いた。

「……覚えてない。勝手にやってくれ。ここと書斎と俺の寝室は掃除しなくていい。君の部屋はあっち」
「かしこまりました」
 ばさばさっと羽音が響いて本の山の陰から極彩色の鳥が飛んできた。

「ジョチュウ、ジョチュウ!」
「ベニー、大人しくしろ」
 彼が手を伸ばすと、その腕に止まった。