「もしかして、時雨の嫁?」
「はい」
「午前中に連絡はもらってたけど……本当に今日来たんだ」
彼は少し考えるそぶりを見せ、優凪を見据える。
「いいか。住み込みの女中として雇われたと言え」
「どうして……」
「君も命が惜しいだろう? 紹介してやるから入れ」
傲岸に言いながら扉を開ける。
彼は誰だろう。
不思議に思うが、別に誰でもかまわないし、嫁でなくてもいい。目的はあやかしの救出だから。
部屋に着くと、彼はドアをノックして返事を待たずに入る。
応接間だったとおぼしき部屋は本で山ができていた。カーテンは閉められ、電灯はついているものの薄暗い。
「兄さん、お待ちかねの女中だよ」
「んあ?」
どさどさっと机上の本を落としながら顔を出したのはもさもさ頭の男性。上背があり丸い眼鏡は曇っていて顔色が悪く、無精ひげを生やしている。白衣もその下のシャツも血のようなもので汚れていた。手には読みかけらしい本がある。
彼を兄と呼んだ少年とはまったく似ていない。
床に積まれた本にはうっすらと埃が積もっている。『あやかし分類学』や『猫があやかしになる日』という背表紙が見えた。
「お前のせいで落ちたじゃないか!」
「不安定な積み方をするのが悪い。というか片付けろ」
「そんな暇あるか! そもそもノックしてから入れ!」
「したよ。どうせ気づかないじゃないか。返事を待ってたら日が暮れる」
「口ばっかり達者になりやがって」
ぎろりとにらむ鋭い目が優凪を捉える。
「はい」
「午前中に連絡はもらってたけど……本当に今日来たんだ」
彼は少し考えるそぶりを見せ、優凪を見据える。
「いいか。住み込みの女中として雇われたと言え」
「どうして……」
「君も命が惜しいだろう? 紹介してやるから入れ」
傲岸に言いながら扉を開ける。
彼は誰だろう。
不思議に思うが、別に誰でもかまわないし、嫁でなくてもいい。目的はあやかしの救出だから。
部屋に着くと、彼はドアをノックして返事を待たずに入る。
応接間だったとおぼしき部屋は本で山ができていた。カーテンは閉められ、電灯はついているものの薄暗い。
「兄さん、お待ちかねの女中だよ」
「んあ?」
どさどさっと机上の本を落としながら顔を出したのはもさもさ頭の男性。上背があり丸い眼鏡は曇っていて顔色が悪く、無精ひげを生やしている。白衣もその下のシャツも血のようなもので汚れていた。手には読みかけらしい本がある。
彼を兄と呼んだ少年とはまったく似ていない。
床に積まれた本にはうっすらと埃が積もっている。『あやかし分類学』や『猫があやかしになる日』という背表紙が見えた。
「お前のせいで落ちたじゃないか!」
「不安定な積み方をするのが悪い。というか片付けろ」
「そんな暇あるか! そもそもノックしてから入れ!」
「したよ。どうせ気づかないじゃないか。返事を待ってたら日が暮れる」
「口ばっかり達者になりやがって」
ぎろりとにらむ鋭い目が優凪を捉える。



