あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「それから、俺は今度副所長になりそうなんだ。副所長が繰り上がりで所長になって、副所長の席が空いて、断ったんだけど無理で……」

 優凪は両手を合わせた。
「お祝いのごちそうを作りますね」

「ありがとう。それと……」
 彼は急にそわそわし始める。

「君の能力はあやかしへの癒しだけじゃないと思うんだ。掃除で邪気が薄まった気がするし、懐かれやすさも異能じゃないかと」
「そうでしょうか」

「それで、その、君の力を研究させてほしいんだ。だから一緒にいてほしくて……」
「はい、わかりました!」
 優凪は元気よく返事をする。時雨ならばあやかしのために有効な研究をしてくれるだろう。

「今のは一応……の申し込みで……」
「え?」

 優凪は聞き返す。
 が、いつもははっきり言う時雨が、もにょもにょと口の中でなにかを言うばかりで、頭をがりがりとかく。

「いや、いいんだ。今度、もっとちゃんとするから」
「はい」
 優凪はにっこりと笑みを返す。

「シグレ、ヘタレ」
「うるさい!」
 時雨が怒鳴ると、ベニーはぎゃははと笑いながら天井を飛び回る。

「ヘタレ、ヘタレ!」
 大喜びで言うベニーとぷんすか怒る時雨に、優凪の頬に自然に笑みが浮かぶ。

 ベニーはそのまま窓の外へと飛んでいく。
 彼が舞う空は青く、透き通る日差しがきらきらと輝いていた。