週末、優凪は応接間で紅茶を淹れてテーブルに並べた。そこには優凪が焼いたパウンドケーキが皿に載っている。
ベニーは近くに用意された止まり木にぶら下がったりして遊んでいる。
開かれた窓からは心地良い風が吹き込み、レースのカーテンがふわりと揺れる。
ソファに向かい合って座り、ふたりでいただきますをして紅茶を飲む。
「おいしい」
「良かったです」
優凪はぎこちなく笑った。話があると言われたが、いい話ではない予感に緊張している。時雨の冤罪があやかしたちを取り戻すことはできたが、それだけで終わりではない。
「あのあとだけど」
切り出した時雨に、優凪はティーカップを置いて背筋を伸ばして待った。
「折辺喜助の娘が逮捕後、取り調べで所長の茎田久蔵が関わったことがわかって捕まったよ」
呼び捨てたところに彼の怒りが感じられた。
「あやかしを強くする薬を違法に作っていたんだ。野良のあやかしを捕まえて実験的に投与し、邪妖化しても放逐。退治や捕獲で操妖師の喜助が呼ばれる、という形で手を組んでいた」
「ひどい」
優凪は眉をひそめた。
「喜助は研究費を出していた。こっそり強化したあやかしを使って尊敬されたかったらしい」
「見栄のためだなんて」
「娘や妻の着物を売って金を作っていたそうだから破綻は近かっただろう。没収したあやかしを新たな操妖にするつもりで自前の操妖はほとんど売ったようだ。破談は寄付をやめるためのいい口実だったろうな」
優凪はため息をこぼした。白露は実の父が泥棒だと知ったらどう思うのだろう。



