あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「那河、嘘でしょ、那河!」
 白露が叫ぶ。
 那河の胴体は主がいなくなったことを知らないかのように暴れ、その切り口からは黒い血があふれている。

「しら、つゆ……」
 斬られた首から、絞り出すように声が漏れた。

「最期に、歌ってほしい……」
「まだしゃべれるのか」
 時雨は警戒して優凪の前に立つ。
 が、那河は朦朧としているようだった。

「知らないわよ、役立たず!」
 白露の言葉に、那河の目が見開かれる。

「掃除の、ときの、歌……」
「私が掃除なんて下賎なこと、するわけないじゃない!」
 那河は愕然と白露を見た。

 その視界がぼんやりと霞む。
 自分はいったいなにをしてきたのか。
 邪気にまみれてもと仕えた人に簡単に捨てられるなんて。ましてやそれが恩人ではなかったなんて。

「きれいにお掃除いたしましょう
 きれいにお掃除いたしましょう」

 歌声が聞こえて、那河は目を動かした。
 ぼやけてよく見えないが、優凪が歌っているようだ。