あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「なによ、どうしたのよ!」
 白露は事態が飲み込めずに那河に声をかける。

「うう……あ……」
 那河は肌すらも闇の色に染まり、青空の下の異物と化す。

「しら、つゆ……の、てき……」
 かろうじて発せられた声が、ひずんで聞こえる。

「これじゃ邪妖だわ。帯刀様、浄化薬を!」
「無理だ、もうない」
 時雨はサーベルを手に優凪の前に立つ。

 那河の髪が無数の蛇となって襲いかかってくる。

「頼む、正気に戻ってくれ!」
 時雨はことごとく切り捨てた。地に落ちた蛇は髪に戻っていく。

 那河は両腕を蛇となして時雨を襲うが、それらも切り落とされた。
 彼は咆哮した。歪んだ悲鳴のようなそれが止んだとき、真っ黒な大蛇となっていた。

 しゅうううう!
 那河は威嚇音とともにしっぽを震わせた。時雨をひと飲みにするべく、チロチロと二股の舌を出して隙を狙う。
 痛ましく見上げた時雨は、歯を食いしばってサーベルを構えた。

「すまない、俺は彼女を守る」
「やりなさい、那河!」
 白露がけしかける。と同時に那河は時雨ではなく優凪に鎌首を向け、襲いかかる。

「させない!」
 時雨はサーベルを振るう。

 大きく開いた口が優凪に届く直前、那河が止まった。
 かと思うと、その首がずるりとずれて、そのまま地面に落ちる。