あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「貴様!」
 サーベルを奪われた警官が慌てる。

「できれば戦いたくない。話を聞いてくれ」
「素人が、いい気になるなよ!」
 血気にあふれたひとりが時雨に切りつけが、時雨はそれをいなしてかわす。

「優凪さん、離れて」
 優凪が少し距離を取ると。

「かかれ!」
 サーベルを持った全員が時雨にとびかかる。が、時雨は素早く彼らの剣を叩き落し、斬りつける。
 警官たちは次々と倒れ、最後にはサーベルを奪われた警官が残った。サーベルをつきつけられて尻餅をつき、震えながら時雨を見る。

「軍人でもないのに……」
「俺がいつ剣を使えないと言った?」

 にやりと笑う時雨のメガネがきらりと光る。
 優凪は呆然とそれを眺めていた。本に囲まれて照れ臭そうに頭をかく時雨と、あまりに違い過ぎる。

「帯刀様」
 震える優凪の声に、警官ははっとする。

「帯刀……剣の名門……しかし、長男はあやかしにうつつを抜かすうつけのはず」
「調べが甘かったな」
 ふりかぶったサーベルを振り下ろすそのとき、優凪が時雨にとびついた。

「おやめください!」
 その隙に、ひとり残った警官はほうほうのていで逃げ出していた。

「あなた様が人を殺めるなど、むごいことを……」
「殺してないよ」
 優凪が顔を上げると、メガネの奥の目が優しく孤を描く。