あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「ダメよ。あなたが邪妖になってしまう」
「偽善者め、命乞いならまだしも!」
 しゅうう! と威嚇音を出し、那河が優凪をにらみつける。

「ダメ、ダメ!」
 ベニーが舞い戻って来て那河の周囲を飛び回る。
「うっとおしい!」
 那河の髪があまたの蛇となって襲うが、ベニーはするりするりとそれを避ける。

「ベニー、逃げて!」
「騒がしいわね」
 玄関から出て来た白露は、首を絞められている優凪を見て悲鳴を上げた。

「いやあああ!」
 そのまま屋敷の中へ引き返す。

 優凪はほっとした。
 伯父を呼びに行ってくれたのだろう。
 那河は人を殺すのが禁忌のためか、巻き付く力が緩む。

「うう……」
 苦し気にうめく那河の髪はさきほどより黒くなっている。

「大丈夫?」
「うるさい!」

 那河の髪が伸びて優凪を縛り上げる。そのままひきずるようにしてあやかし舎に連れられた。
 どさっと投げ捨てるように優凪は放りだされ、扉が音を立ててしまり、取り残される。

 優凪は痛みの中で考える。那河は殺したい衝動と邪妖化を防ぐ本能に苦しみ、とりあえず優凪をあやかし舎に放り込んだのだろう。
 体を起こし、ぎゃあぎゃあとさわぐあやかしに首をかしげる。