あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる




 差し込んだ朝日に目をしばたたくと、ぼんやりと台所の風景が目に入って来た。
 台所の机で時雨を待っていたら、そのままうつ伏せて寝てしまったらしい。
 机の隅にはベニーが眠っていたが、優凪の気配で目をぱちっと開けた。

「オハヨウ、シグレハ?」
「おはよう。まだみたい」
 優凪は残ったままの時雨の夕食を見つめる。
 冷めきったそれを朝食にして片付けを済ませ、おむすびを作ってから家を出た。

 体はけだるく胸は重く、朝日の明るさが恨めしい。
 辿り着いた先は、勝手知ったる折辺家。
 門を開き、敷地に入ったとき、ベニーが優凪の肩に舞い降りた。

「ユウナギ、ユウナギ」
「ついて来ちゃダメよ、すぐに帰って」
 ベニーは珍しい西洋のあやかしだ。もし喜助に見つかったら……。

「お前、なにしに来た!」
 厳しい声が飛び、優凪は身を固くした。
 庭先から現れた白蛇は、しゅるしゅると那河へと姿を変える。

「面妖なあやかしで白露様に攻撃するつもりか」
「違うわ。伯父さまと話がしたいの」

「必要ない」
 那河はしゅっと腕を伸ばした。蛇と化したそれに襲われ、ベニーは空に飛んで逃げる。

「やめて!」
 優凪が那河にとびかかるが、簡単に跳ね返され、地面に倒れた。那河の腕が伸びて蛇となり、優凪の首に巻き付く。

「白露様の未来にお前は邪魔だ! いっそ殺してやる!」
 憎々しげにこぼす那河の髪は前よりも黒ずんで見えた。