あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

 優凪の口から、いつしか歌がこぼれていた。

「きれいにお掃除いたしましょう
 きれいにお掃除いたしましょう
 福の神はきれいなところが大好きで
 疫病神は汚いところが大好きで
 だからきれいにいたしましょう」

 母が掃除のときに口ずさんでいたから覚えたが、節回しも歌詞も適当だ。母以外が歌うのを聞いたことがないし、母が気分で作ったのだろう。

 竹ぼうきで掃いたあとは雑巾で柱と檻を磨き、満足して額の汗を拭う。
 幼い頃からあやかしは身近で親しみを抱いていて、あやかし舎の掃除も好きだ。バレると掃除をさせてもらえなくなるだろうから嫌そうな振りをしている。

「どうして嫌がらせなんてするかな」
 白露は恵まれていて、なにもかも優凪より上だ。

 両親が生きてそばにいる。それだけでも羨ましくてたまらない。どれだけ涙をこぼしても父も母も蘇らない。舶来の車に轢かれかけた子をかばって亡くなったのは十三年も前で、父から操妖術を教えてもらうことはなかった。
 引き取ってくれたのは母の兄の喜助。父と同じく操妖術師だが、白露より優秀になると困るからと操妖を教えてもらえなかった。

「だいぶ減ったなあ」
 かつてたくさんいた操妖は、寿命だったりよその操妖師に譲ったりして減っている。

 あやかし舎を出ると、西からの朱の光を浴びて白露が歩いていた。隣には彼女の操妖の那河(なが)が人の姿で寄り添っている。数少ない知能を持った白蛇のあやかしで、いつも優凪をにらんでくる。
 果たして今日も赤い目をぎろりと向けられた。