あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「あやかしは外に出しません、だから没収はやめてください!」
「蕗藤さん、落ち着いて。必ず取り返すから」
 目の前で時雨に手錠がかけられ、彼は警官隊に引っ立てられる。

 警官隊があやかしの入った檻を荷車で運び出すのを見届け、優凪は床にへたりこんだ。
 誰もいなくなった家はがらんとしていて、空気がやけにひんやりしている。
 どうしてこんなことに。彼は純粋にあやかしのために頑張って来たのに。

「すぐ誤解は解けるわ。きっとすぐに帰ってくる」
 あふれそうになる涙をぎゅっとこらえ、優凪は立ち上がる。

「だから、ごはんの仕上げを……」
 台所で空のはずの鍋の蓋がずれていることに気が付き、慌てて蓋を開ける。

「ミツカッタ!」
 ベニーは楽し気に飛び出して頭上を一周したあと、彼女の肩に止まる。
 優凪はその背をそっと撫でた。

「シグレ、カエッタ?」
「いないの……今は」
 優凪の言葉に、ベニーは首をかしげる。

「みんな、連れて行かれちゃった」
「ユウナギ、ゲンキダシテ」
 ベニーが頭を寄せて来て、羽毛が優凪の頬を撫でる。温かな気配はそれだけで心が癒される。

 優凪はごはんを仕上げ、もそもそと食べた。
 反逆罪ともなれば重罪だが、時雨は伯爵の息子。警察は慎重に取り調べをするだろう。
 きっとすぐに帰って来る。
 祈りのように、そう信じるしかなかった。