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ベニーから状況を聞いた優凪は、難しい顔で黙り込んだ。
まさかそんなことになっているとは。
自分が身を引けばよかったのか。だが、それでは時雨の善意が無駄になる。
とにかくお金だ。ほかでも働こうか、しかし、それではあやかしのお世話ができなくる。
翌日からは時雨が出張に行き、優凪はもんもんと過ごした。
数日して帰った彼は、にこにこと機嫌が良さそうだった。
玄関でおみやげのお菓子と上着を受け取り、優凪は尋ねる。
「良いことがおありでしたか?」
「邪気を払う薬の試作品ができた。完成すれば邪妖化して駆除されるあやかしを減らせる」
「すごい……」
「鎮静薬も試作できたんだ。鎮静化してから邪気を払い、人のいない山に放つ。これができれば共存を説得しやすくなる」
良い知らせに、優凪の胸が明るくはずむ。
「やっと一息つける。君のごはん、久しぶりで楽しみだ」
「準備してありますのですぐに仕上げますね。そうそう、最近はベニーがからっぽの鍋の中にかくれんぼすることを覚えて、洗い直しがなんどもあるんですよ」
「ははっ、あいつも君が来て嬉しいんだよ」
時雨が穏やかに笑うから、優凪の頬も自然と緩む。
優凪が台所へ引っ込もうとしたとき、玄関のドアがノックされた。
「帯刀、警察だ!」
時雨は首を傾げ、優凪は不安になって足を止めた。
彼がドアを開けると数人の警官がどやどやと入って来て、先頭の男が紙をかかげる。



