あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

 心配させないためだろう。だから余計に心配だ。
 台所で夕食を食べながら、机の隅に座るベニーに話しかける。

「帯刀様の帰りが遅くてさみしいね」
「サミシイ。ケンキュウジョ、タイヘン。ショチョウ、イジワル」

「どういうこと?」
 尋ねる優凪に、ベニーは片言で話し始めた。

***

 今日も残業だ。
 時雨はため息をついた。

 ここ最近、優凪のごはんが食べられない。あの味を知った現在、近所の店屋物では満足できない。
 それだけじゃないとは気づいているが、今まで縁遠かったその感情を直視できずにいた。

 すっかり冷めたお茶を飲み、先日の所長とのやりとりを思い出す。
 白露たちが来た翌日、所長の茎田久蔵(くきた きゅうぞう)に呼び出された。

『折辺家との縁談を断ったそうだな。そのせいで寄付を打ち切られたぞ』
『ここは国立です。寄付がなくても大丈夫です』
『研究所にあやかしが何体いると思ってるんだ』

 時雨は言葉に詰まった。餌代だけでもそうとうだ。さらに世話をする人件費、施設の管理費。大型のあやかしの檻が老朽化していて、新しく頑丈な檻が必要だ。
 資金が必要なのもわかるが所長は金の話ばかりで尊敬できない。だが、逆にそこが突破口にもなる。

『浄化薬を完成させればお金は作れます』
『それはいつだ?』
『まだしばらくは……』