あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「社交界では君がひどい扱いを受けているのは広まっていたそうだよ。それで弟は両親に君のことを言い、縁談を申し込んだ。君は逃げ場所ができる、俺は嫁をもらって一石二鳥だと」
「そうだったんですね」
 優凪はそうとしか答えられなかった。

「で、俺は急いであの家に行き、正式に君を嫁にすると言った」
「え!?」

「君を解放したくて。反故にされたくないから証書も書かせた。だから街でもとっさに夫婦だと……説明していなくて悪かった。どう話すか迷って」
 頭の後ろをかく彼の頬は心なしか赤く、優凪は思わず笑みをこぼす。

「守ってくださってありがとうございます」
「……君は大事な人だから」
 どきん、と優凪の胸が大きく鳴った。

「掃除もうまいし、飯もうまいし、あやかしに懐かれているし、それから……」
 言いにくそうに、彼は頭をがりがりと掻く。
 優凪はホッとすると同時に、少し寂しくなった。

「とにかく、ずっとうちにいてほしくて……」
「大丈夫です、嫁に行く予定なんてありませんから!」
「……うん」
 時雨は頭をがりがりとかいてうつむく。

「お金は働いてお返しします」
「いらないよ」

「そんなわけには参りません」
 毅然と答える優凪に、彼は苦笑をこぼした。
「じゃあ、ゆっくり頼むよ」

「急いでお返しできるように頑張ります!」
 意気込む彼女に、時雨はまた頭をかいた。