あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「帯は買いにいきましょう。私も着物が欲しいわ」
「西洋から入った流行柄がいいわ」
 まさか新しく欲しいから捨てたのでは、と疑惑が湧いたが言えるわけがない。

「さっさと行きなさい!」
 猫かなにかを追い払うように部屋を出され、優凪はぼそりとつぶやく。
「あやかし舎の掃除なんて、ご褒美だわ」

 優凪は頬をだらしなく緩めながら外に出る。
 あやかし舎はその名の通り、あやかし用の小屋だ。
 扉を開けて中に入ると檻があり、明り取りの窓から少しばかりの光が入るだけで薄暗い。

「みんな、いないんだ」
 優凪はがくりと肩を落とす。

 操妖師である伯父の喜助(きすけ)が仕事であやかしたちを連れて行ったのだろう。
 最近は野良のあやかしが狂暴化して邪妖(じゃよう)となり人を襲う事件が増えた。喜助のような操妖術師が警察に協力して対応に当たっている。

 日環国(ひのわのくに)が開国して数十年。
 あやかしが減りつつあり昨今、廃業する操妖師が多い。仕事がひっきりなしに来る喜助はやり手と言っていい。

 喜助は優凪の父とは違い、操妖を使い捨ての道具のように扱っている。不憫で抗議したが、殴られて終わった。
 優凪がここから逃げないのはひとえにあやかしたちが心配だからだ。
 元々は華族の身分だったが『掃除は人としての基本だ』と母に教えられてきたから、優凪は掃除が苦ではない。