あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

 力の強い那河が命令すればあやかしは言うことを聞くから、実際には操妖術なんて使っていない。たいてい女性は操妖術の仕事をしないから、それが発覚することはない。

「白露様」
 外からの声に障子戸を開けると、蛇の姿の那河がするすると入って来た。
 最近はずいぶんと薄汚れた。白蛇だから珍重なのに黒ずむなんて最悪だ。

「あの者たちですが」
 時雨は優凪の服を買い、着物を注文し、髪飾りやブローチを買い与えた。
 優凪はお化け屋敷のようだった洋館をきれいにして、近所の評判が良いという。

「許せない」
 頭のおかしい研究者なんて盗人にふさわしい、いびられて苦しめばいいと喜んだ。
 なのに好待遇を受けている。あのときの優凪の着物は上品で上等。流行柄の自分の着物が品なく見えて癪に障った。

 結婚相手の男は尋常でなく美しかったし、金もあるようだ。多少の難があっても伯爵の嫡男であり、次期伯爵であることにかわりはない。
「そうよ、あの方には子爵令嬢である私のほうがふさわしいわ」

 パンと手を打って白露は立ち上がる。
 父に素敵な提案をするために。

***

 翌日の夜、予想外の来客に優凪は驚いた。
 帰ったばかりの時雨に告げると、顔をしかめて応接間に通すように言われた。

 優凪は困惑しながらその客……白露とその両親を案内する。
 お茶を用意して部屋に行くと、時雨は彼らと向かいあってソファに座っていた。