青ざめる優凪に、白露はふん、と鼻を鳴らす。
「その着物、また盗んだの?」
「違います!」
「聞き捨てならないな」
むすっとした時雨が割って入り、白露はぽかんと彼を見た。それから慌てて笑顔を作る。
「どちら様かしら」
「彼女の夫だ」
「は!?」
すっとんきょうな声を上げる白露の前で、優凪は目をぱちぱちさせた。
「帯刀様」
「君はなにも言わなくていいよ」
囁く声はいつになく甘ったるい。とにかく彼に合わせよう、と優凪は黙る。
「こいつが嫁に行ったのは偏屈な研究者で……」
「俺がそうだよ」
白露の目は信じられないと言いたげに彼の全身を上下した。
「だったら忠告してあげる。その女はうちの着物や帯を盗んで売り飛ばしたのよ!」
「濡れ衣だ」
「泥棒を庇うの!?」
「俺は彼女を信じてる。もう行こう」
時雨は優凪の肩を抱いて立ち去る。
その後ろ姿を、白露はぎりっとにらみつけた。
「那河、あいつらを探って!」
「承知」
影からすすっと蛇が現れ、人ごみに紛れた。



