翌週の日曜日、時雨は午前中から出かけた。
先に出た彼は髪を切ったりして身なりを整える予定で、商店街に新設された時計台で待ち合わせだ。
お昼前、優凪は時雨の母の着物を着て家を出た。
彼が借りてきてくれたのだが、不安が尽きない。きちんと着こなせているだろうか。髪は変じゃないだろうか。
時計台の下できょろきょろしていると、洋装の美しい青年が寄って来た。身なりの良さからしてどこかの華族だろう。通りすがりの女性が彼を見てため息をこぼす。
「来てくれてありがとう」
怪訝に彼を見て、驚いた。
「もしかして帯刀様?」
「そんなに違って見える?」
彼は恥ずかしそうに頭をかいた。この癖は確かに彼のものだ。
「すごく見違えました。眼鏡はどうなさったのですか」
「かけないほうがいいって散髪屋で言われて、はずしたよ。一応、なくても見えるしね」
さっぱりした彼はどんな軍人より凛々しい。
こうして見ると、たしかに時雨は雷霞と兄弟だ。艶やかな黒髪になめらかな白い肌。目つきこそ鋭いが、彼の知的な雰囲気によく合っている。



