あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「快適そうだし結婚しなよ。お父様とお母様には了承済みだから」
「勝手になにしてくれてんだ!」
「僕は様子を見に来ただけだから帰るよ。見送りはいい、お幸せに」
 ぎゃんぎゃんと文句を言う時雨を残し、雷霞は出て行った。

 はあああ、と大きなため息をついて時雨は深くソファに沈みこむ。
 それからはっとして立ち上がり、優凪に深々と頭を下げた。

「うちの愚弟が申し訳ない! 俺は本当に女中が来たと思っていた。弟はきちんと叱っておく。それで……」
 時雨はおそるおそる顔を上げて優凪を見る。
「よかったらこのまま勤めてくれないか」

「それは……大丈夫です。むしろありがたいです」
「本当に!?」
 優凪はにっこりと笑みを返す。

 女中が板についていて、嫁入り話をすっかり忘れていた。
 殴られない、罵倒されない、その上あやかしのお世話ができて給料までもらえる。こんな嬉しい仕事はほかにない。

「これからもお願いします」
「よろしく頼む」
 ふたりで頭を下げ合って、ふふっと笑い合った。