あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

 不思議に思っているといい匂いが漂ってきて、吸い寄せられるように台所に向かった。 そこには着物の袖をたすき掛けにからげた優凪がいて、味噌汁の味見をしていた。
 振り向いた優凪はにこっと笑う。その姿がどうにもまぶしくて目がちかちかした。

「お帰りなさいませ。お味噌汁ができました。ごはんも炊き立てですよ」
「ああ……」

「味をご覧になられますか?」
「いや、いい……」
 こんないい匂い、絶対に美味しいに決まっている。出汁と味噌の匂いだけで口の中に唾液があふれる。

「どちらで召し上がられますか?」
「書斎で……」

「食べる場所がありましたでしょうか」
「すぐ作るよ」

 彼は部屋に入って顔をしかめた。
 掃除を拒否したここは空気が淀んでいる。
 机の上の本をすでに積み上がった本の上に乗せると、倒れて床に散らばった。
 食事をお盆に乗せた優凪が本を避けて歩く様に、申し訳ない気持ちになる。

「今度の土曜、部屋の片付けを手伝ってもらえないかな」
「いいんですか!? もちろんお手伝いいたします!」

 優凪の笑顔が、またしてもきらきらしている。
 ぺりとお辞儀をしてから出て行く彼女を見送り、時雨はどきどきする自分に戸惑いながら食事を口にした。

 白米が炊き立てですごくおいしい。味噌汁の出汁と味噌の塩梅(あんばい)がいいし、タラの煮つけは甘辛くてごはんに合う。豆腐と青菜の白和えはゴマの風味が効いている。