あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「ナオッタ、ナオッタ!」
 ベニーは嬉し気に頭を上下させた。

「すごい異能だ! っとと」
 彼の手の中で暴れるから、イタチは慌てて檻に戻された。

「異能?」
「自覚がないのか?」
 思い返してみれば、ケガをしたあやかしと接したことなど一度もなかった。

「この調子でほかのあやかしも治してくれ!」
 嬉々として両手を握りしめられ、優凪は眉を寄せて彼を見た。
「治してから実験に使うんですか? 許しません!」
 手を振り払うと、時雨のメガネがギラリと光った。

「そんなことしないよ」
「だったらなんで閉じ込めてるんですか!」

 疑惑のまなざしに、時雨はがりがりと自身の頭をかいた。
「あれか、あの噂のせいか……」
 深いため息をこぼす彼を、優凪は油断なく見つめる。

「俺があやかしを集めているのは確かだ。だけどケガをしたもの、親からはぐれたもの、見世物小屋からひきとったもの、単独で生きていけないものの保護だよ」
 食い詰めた操妖師が見世物小屋であやかしを酷使しているとは、優凪も聞いたことがある。

「野生に戻せそうなら戻している。人に害のないように山奥に放しているよ」
 あやかしが人を襲うことはめったにないが、畑を荒らしたりなどして害獣とみなされることはしばしばある。

「あやかしを生きたまま裂くとか毒を飲ませるとか」
「手術と投薬のことかな。薬は抵抗して暴れるのなんの。おかげでしょっちゅう傷だらけだ」
 袖をまくった彼の腕にはひっかき傷がたくさん刻まれていた。衣服についていたのは、この血だろう。