あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる




 本館の扉はさび付いているのか、ぎいい、と音を立てて開いた。
「このドアも手入れが必要ね」
 窓からの日は木々に遮られて暗く、館内は薄暗かった。邪気が漂っていないのが不思議なくらいだ。

 足音を忍ばせて歩き、手近な部屋のドアを開ける。
 中を覗いた瞬間、カッと血が昇った。
 檻の中にあやかしが囚われている。狐型、狸型、犬型などさまざまだ。しっぽや足がなかったり、目や耳がなかったり、立てない様子のものもいた。
 掃除はろくにされていないようで悪臭が漂い、餌を入れる皿は空になっている。

「かわいそうに」
 すぐにでも檻から出したい衝動をぐっとこらえる。まずは全体を把握してからだ。
 ほかの部屋にもあやかしが囚われていた。どこもカーテンが閉まっていて薄暗く、不健康そうだ。
 洋館の二階、最後の部屋に辿り着く。
 扉を開け、眉をひそめた。ほかの部屋以上に悪臭が強い。

「ひどい……」
 中にいたのはケガをしたあやかしだった。
 一番近くにいた猫のあやかしは耳が四つあり、角が生えていた。胴体に巻かれた包帯がほどけてケガが露出している。

 檻の扉を開けて手を伸ばすと、怯えて動かない背を撫でて、優凪はつぶやく。
「早く治りますように」
 願った直後、手からなにかがあふれるのを感じた。
 と、猫の傷が塞がっているのが見えた。

「どういうこと?」
 檻の扉を閉めて、自分の手をしげしげと見つめる。
 ばたばたと走る足音が聞こえ、はっと顔をあげたときには部屋の扉が勢いよく開く。

「なにをしている!」
 怒鳴り声とともに飛び込んできたのは。
 出勤してここにいないはずの、帯刀時雨だった。