あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「なにはともあれ、掃除と食事よね」
 あちこちに埃が積もっていたし、庭の繁り過ぎた木も雑草も気になって仕方がない。出前ばかりだなんて不経済だし、味が濃くて体に悪そうだ。飲み物は水だけで汁物もお茶もない。

「立派なお台所があるのにもったいない。華族ったら浪費するばっかりね」
 蕗藤の家では贅沢はしていなかったが、白露はよく新しい着物を買ってもらっては優凪に自慢していた。
 囚われのあやかしが気がかりだったが、ほこりっぽい布団にくるまると、疲れですぐに眠ってしまった。



 翌日、時雨が仕事に出たのち、書斎に忍びこむ。
 カーテンが閉められて薄暗い中、山積みの本の隙間を縫って彼の机にたどりつく。
 引き出しを開けると、筆記具、木の枝、石ころなどが乱雑に入っていた。その中を漁り、鍵を見つけた。

「これじゃあ本当に泥棒ね」
 優凪は鍵を手に本館に向かった。

 庭にある木々はあいかわらず鬱蒼としていて、だから気付かなかった。枝に止まったベニーが見ていることに。
 優凪が本館の中に入ると、ベニーは翼を広げて飛び立った。

「シンニュウシャ、アブナイ、アブナイ」
 彼は飛んでいく。
 時雨に侵入者を伝えるために。