あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

「御大層な呼び方はやめてくれ。普通でいい」
 普通って……と思案したのち、優凪は言う。

「帯刀様とお呼びすればいいですか?」
「……まあ、それなら。で、届いたのか?」

「届いた、とは」
「昼めしは配達を頼んである。しまった、君の分がないな」

「材料があれば作ります」
「作れるのか!?」
 聞き返され、優凪はきょとんとした。

「そうか、そのための女中だよな」
 ふふふ、と笑う彼の顔には影ができていて怖い。

「今日の昼めしは外で食うといい。明日の朝の分まで弁当を注文してあるから君の分を追加注文して、そのあとは作ってくれ。食材は弁当を持ってきた御用聞きに言えばいい。代金は月末にまとめて払う」
 彼はポケットに手を突っ込むと財布を取り出し、中からお金を取り出して優凪に渡した。

「ありがとうございます」
 受け取って下がった優凪は首をかしげる。
 折辺の家なら食べなくていいと言われるところだ。外で食べろとお金を渡されるなんて予想外すぎる。

「いつ化けの皮がはがれるかしら」
 昼になると御用聞きが来て弁当を渡され、言われた通りに夕方と明朝の弁当の追加と、野菜と卵、米などを注文した。
 昼食後は台所の掃除に専念し、夕食を食べたあとは与えられた部屋の掃除をしながら考える。
 本に囲まれている彼は人相が悪いが、ぼさぼさの頭と無精ひげをなんとかすれば普通の人に見えそうだ。