あやかしを慈しむ娘は不器用なマッドサイエンティストの愛に守られる

 細かい砂利の敷き詰められた庭には飛び石があり、その上をぴょんぴょんと跳ねるのは兎のあやかし。端まで跳んで、振り返る。
 真似して跳ねた蕗藤優凪(ふきとうゆうなぎ)は兎に追いついてにこっと笑った。

「負けちゃった! 今度は池までだよ。よーい、どん!」
 言うなり跳ねる優凪だが、あっさりと追い越される。
 松の木には白い羽の生えた猫のあやかしが座り、地上には四本足のスズメのあやかしがいて、彼女らを見守っている。

「またあやかしと遊んでいるのか?」
「本当に仲良しね」
「お父様、お母様!」

 縁側に父があぐらをかいて座り、母が膝を突いて迎え、駆け寄った優凪はちょこんと腰かける。
 兎のあやかしは突然終わった競争にきょとんとして、ひょこひょこと優凪の元へやってきた。競争を見守っていた猫と鳥のあやかしも優凪の足元に集まる。

操妖(そうよう)術を使わず交流できるなんて。優凪は特別ね」
 操妖術はあやかしを従えて意のままに操る術で、操妖師が使うあやかしは操妖と呼ばれる。

「普通は違うの?」
「あやかしは動物と同じだからな」
「昔はお話しできるあやかしもいたのよね?」
「今はほとんどいないわねえ。人型もとんと見ないわ」
 母が悲し気なので、優凪は話を変えることにした。

「もうすぐ操妖術を習えるのよね。楽しみ!」
「優凪はきっと良い操妖師になるわ」
「教えがいがありそうだ」
 穏やかな笑みを浮かべる父と母。
 だが、優凪が父から操妖術を教わることは、永遠になくなった。