〜新田陽翔〜
放課後の廊下は、やけに人が多かった。
さっきまで教室に収まってたはずのざわつきが、そのまま外に溢れてきたみたいな感じ。理由はまあ、わかりやすい。
校外学習。
その中でも、さっき決めたばっかの部屋割り。
どこ見てもその話してるやつばっかで、聞く気なくても耳に入ってくる。
「どこと一緒?」
「マジで最悪なんだけど」
「夜どうする?」
……うるせえな、ほんと。
俺は軽くため息をつきながら、廊下の窓際に寄った。人の流れから少し外れるだけで、だいぶマシになる。
スマホを取り出そうとしたときだった。
「新田」
声。
振り向くと、永瀬がいた。その後ろに、水沢と立花。それと――
「……琉生もいるのか」
「悪いか?」
「いや別に」
浅倉はいつも通りの顔で、壁に軽く寄りかかってる。
このメンツ、なんか見覚えあるなと思ったら、ついこの前も似たような集まり方してた気がする。
「で?」
俺はそのまま聞く。
「なんの集まり?」
「集まりってほどでもないけど」
永瀬が肩すくめる。
「たまたま揃っただけ」
「絶対嘘だろ」
「半分くらい本当」
ああ、はいはい。水沢がくすっと笑う。
「まあいいじゃん。ちょうどよかったし」
「何が」
「校外学習の話」
やっぱそれか。俺は軽く頷く。
「そっちはどうなったの?」
水沢が聞いてくる。
「部屋?」
「うん」
「普通に決まった。クラスの同じ委員会のやつと」
「そっちは?」
「こっちも普通」
永瀬が答える。
「僕と浅倉」
「へえ」
ちらっと見る。
「なんか意外だな」
「そうか?」
「もっと面倒くさい組み方してるかと思った」
「偏見だろそれ」
浅倉が小さく笑う。この二人ならそうなるか。
「で」
俺は視線をずらす。
「そっちは?」
立花と水沢。
立花は一瞬だけこっち見て、少しだけ間があいてから答えた。
「私と、莉央」
「うん」
水沢が軽く頷く。
「誘ったらOKもらえた」
「“誘ったら”って」
俺は少しだけ笑う。
「最初からそのつもりだっただろ」
「バレた?」
「そりゃな」
なんとなくわかる。琉生から聞いてる感じ水沢はそういう動き方するタイプだし。
立花は少しだけ困ったように笑ってるけど、嫌そうではない。
それなら問題ないか。
「そっか」
俺は短く言う。
「じゃあ安心だな」
「何が?」
永瀬が聞いてくる。
「いや別に」
肩すくめる。
「変な組み合わせになってなくてよかったなってだけ」
「保護者かよ」
「違うわ」
即答。
……いや、半分くらいそうかもしれないけど。
少しだけ沈黙。
廊下のざわめきは相変わらずだけど、この周りだけちょっと落ち着いてる。
「夜、どうすんの?」
なんとなく聞く。
「何が」
「部屋で」
「あー」
永瀬が少し考える。
「まあ普通に過ごすだろ。騒ぐやつは騒ぐだろうけど」
「浅倉は?」
「さあ」
即答。しかも曖昧な。
「そっちは?」
今度は永瀬が聞いてくる。
「どうせ騒ぐでしょ」
「俺が?」
「違う?」
「いや」
少し考える。
「たぶん騒ぐ」
「だろうな」
即答された。なんか納得いかねえけど、否定はできない。
「新田くん、そういうの中心にいそうだしね」
「勝手にそうなるだけだろ」
「それを中心って言うの」
まあ、そうか。
立花はその会話を少し静かに聞いてる。
けど、さっきより表情は柔らかい。
……前のこと、もう大丈夫そうだな。
「立花は?」
俺は軽く聞く。
「え?」
「部屋で何するか」
「うーん…」
少しだけ考えてる。
「普通に話したり、とか?」
「だよな」
それが一番普通。
「無理して騒がなくていいと思うし」
「うん」
小さく頷く。
「そろそろ帰るか」
「あー、だな」
俺も頷く。
廊下の人も少しずつ減ってきてる。
「じゃあな」
軽く手を上げる。
「また学校で」
「おう」
「うん」
「またね」
「じゃあ」
それぞれバラける。
俺はそのまま階段の方に向かう。
数歩歩いてから、少しだけ振り返る。
さっきのメンツは、まだ少しだけその場に残ってた。
なんとなく。
――悪くないな、と思う。
別に特別な何かがあるわけじゃないけど。
こうやって、自然に話せる感じ。
校外学習も、まあ。
「……楽しみではあるかもな」
小さく呟いて、今度こそ前を向いた。
放課後の廊下は、やけに人が多かった。
さっきまで教室に収まってたはずのざわつきが、そのまま外に溢れてきたみたいな感じ。理由はまあ、わかりやすい。
校外学習。
その中でも、さっき決めたばっかの部屋割り。
どこ見てもその話してるやつばっかで、聞く気なくても耳に入ってくる。
「どこと一緒?」
「マジで最悪なんだけど」
「夜どうする?」
……うるせえな、ほんと。
俺は軽くため息をつきながら、廊下の窓際に寄った。人の流れから少し外れるだけで、だいぶマシになる。
スマホを取り出そうとしたときだった。
「新田」
声。
振り向くと、永瀬がいた。その後ろに、水沢と立花。それと――
「……琉生もいるのか」
「悪いか?」
「いや別に」
浅倉はいつも通りの顔で、壁に軽く寄りかかってる。
このメンツ、なんか見覚えあるなと思ったら、ついこの前も似たような集まり方してた気がする。
「で?」
俺はそのまま聞く。
「なんの集まり?」
「集まりってほどでもないけど」
永瀬が肩すくめる。
「たまたま揃っただけ」
「絶対嘘だろ」
「半分くらい本当」
ああ、はいはい。水沢がくすっと笑う。
「まあいいじゃん。ちょうどよかったし」
「何が」
「校外学習の話」
やっぱそれか。俺は軽く頷く。
「そっちはどうなったの?」
水沢が聞いてくる。
「部屋?」
「うん」
「普通に決まった。クラスの同じ委員会のやつと」
「そっちは?」
「こっちも普通」
永瀬が答える。
「僕と浅倉」
「へえ」
ちらっと見る。
「なんか意外だな」
「そうか?」
「もっと面倒くさい組み方してるかと思った」
「偏見だろそれ」
浅倉が小さく笑う。この二人ならそうなるか。
「で」
俺は視線をずらす。
「そっちは?」
立花と水沢。
立花は一瞬だけこっち見て、少しだけ間があいてから答えた。
「私と、莉央」
「うん」
水沢が軽く頷く。
「誘ったらOKもらえた」
「“誘ったら”って」
俺は少しだけ笑う。
「最初からそのつもりだっただろ」
「バレた?」
「そりゃな」
なんとなくわかる。琉生から聞いてる感じ水沢はそういう動き方するタイプだし。
立花は少しだけ困ったように笑ってるけど、嫌そうではない。
それなら問題ないか。
「そっか」
俺は短く言う。
「じゃあ安心だな」
「何が?」
永瀬が聞いてくる。
「いや別に」
肩すくめる。
「変な組み合わせになってなくてよかったなってだけ」
「保護者かよ」
「違うわ」
即答。
……いや、半分くらいそうかもしれないけど。
少しだけ沈黙。
廊下のざわめきは相変わらずだけど、この周りだけちょっと落ち着いてる。
「夜、どうすんの?」
なんとなく聞く。
「何が」
「部屋で」
「あー」
永瀬が少し考える。
「まあ普通に過ごすだろ。騒ぐやつは騒ぐだろうけど」
「浅倉は?」
「さあ」
即答。しかも曖昧な。
「そっちは?」
今度は永瀬が聞いてくる。
「どうせ騒ぐでしょ」
「俺が?」
「違う?」
「いや」
少し考える。
「たぶん騒ぐ」
「だろうな」
即答された。なんか納得いかねえけど、否定はできない。
「新田くん、そういうの中心にいそうだしね」
「勝手にそうなるだけだろ」
「それを中心って言うの」
まあ、そうか。
立花はその会話を少し静かに聞いてる。
けど、さっきより表情は柔らかい。
……前のこと、もう大丈夫そうだな。
「立花は?」
俺は軽く聞く。
「え?」
「部屋で何するか」
「うーん…」
少しだけ考えてる。
「普通に話したり、とか?」
「だよな」
それが一番普通。
「無理して騒がなくていいと思うし」
「うん」
小さく頷く。
「そろそろ帰るか」
「あー、だな」
俺も頷く。
廊下の人も少しずつ減ってきてる。
「じゃあな」
軽く手を上げる。
「また学校で」
「おう」
「うん」
「またね」
「じゃあ」
それぞれバラける。
俺はそのまま階段の方に向かう。
数歩歩いてから、少しだけ振り返る。
さっきのメンツは、まだ少しだけその場に残ってた。
なんとなく。
――悪くないな、と思う。
別に特別な何かがあるわけじゃないけど。
こうやって、自然に話せる感じ。
校外学習も、まあ。
「……楽しみではあるかもな」
小さく呟いて、今度こそ前を向いた。
