〜遠山楓理〜
バレンタイン前日。
教室、なんかうるさい。
女子が集まってキャッキャしてるのも、男子が変に落ち着いてるフリしてるのも、全部“明日”のせい。
……ほんと、わかりやすい。
私はっていうと、別に何も変わらない。
だって、やること決まってるし!
「遠山、チョコどうすんの?」
隣の席の子が聞いてくる。
「どうって?」
「誰にあげるのって!」
「あー、それ?」
軽く笑う。
「まあ、あげるよ」
「誰にー?」
少しだけ間を置く。
「さあね?」
にやっと笑って終わり。
――言うわけないじゃん。
どうせ明日、見ればわかるし。
カバンに手を入れる。
指先に当たる、小さな箱。
コンビニで買ったやつ。
ちょっといいやつ。
でも、手作りとかじゃない。
……別にいいでしょ。
ああいうの、重いじゃん。
それにさ。
「中身より人でしょ」
小さく呟く。
重要なのはそこ。
何を渡すかじゃなくて、“誰が渡すか”。
それだけで、全部ひっくり返る。
放課後、教室を出た。廊下の窓、曇ってる。寒そう。
でもまあ、今はどうでもいい。
頭の中、もう明日のことでいっぱいだから。
――彼女いるから
思い出す。
あの時の新田くんの顔。
真面目で、ちょっと強い目。
……でもさ。
「だからなに?」
思わず口に出る。
ほんと、それ。
付き合ってるってだけで終わりって思ってるほうが、おかしいでしょ。
恋愛ってそんな固定されるものじゃないし。
むしろ――
「動いたほうが勝つし」
階段を降りながら、笑う。
立花結衣。
頭に浮かぶ。
静かで、地味で、ちゃんとしてる子。
……うん、知ってる。
悪くないよ。でも。
「つまんないよね」
ぽつり。
一緒にいて楽しいかって言われたら、どうなんだろ。
会話、続くのかな。
ああいうタイプってさ、結局“無難”で終わるんだよね。
「飽きるって」
軽く言う。断言できる。だって見えてるもん。
新田くん、ああいうのにずっと満足するタイプじゃない。
今はいいかもしれないけど。
そのうち、絶対思う。
「なんか違うな」って。
――そこ。
そこに入ればいい。
簡単。
靴を履き替えて外に出る。
冷たい空気。でも気持ちいい。
家までの道、自然と考える。
どうやって渡すか。
どうやって揺らすか。
でも正直、そんなに複雑じゃない。
「普通に行けばいいでしょ」
答え、出てる。
呼び出して。
目見て。
はっきり言う。
それだけ。
変に小細工いらない。
だって私だし。
――負ける要素、ないし。
家に着く。ドア開けて、そのまま自分の部屋に入った。
カバンをベッドに投げる。
そのまま座って、箱を取り出す。
赤い包装。シンプル。でも十分。
くるくる回して眺める。
「これでいい」
頷く。
むしろちょうどいい。
手作りとかだったら、“頑張ってる感”出ちゃうし。
そんなのいらない。
「余裕で勝てるのに、努力してますみたいなのダサいでしょ」
軽く笑う。
大事なのは余裕。
「別にあげてもいいけど?」くらいの温度。
でも。ちゃんと刺す。
そこだけ外さなければいい。
ベッドに倒れ込んで、天井を見る。
静か。
でも頭の中はクリア。
明日、新田くんは絶対揺れる。
確信。
だって。
今の関係、完成してないもん。
できたばっかり。
まだ浅い。
まだ軽い。
まるで不安定な積み木の塔みたいな。
そこに、私が入るのであれば。
――崩れないわけない。
「しかもさ」
少しだけ目を細める。
「私と比べられるわけじゃん」
笑う。
それだけで勝ちみたいなもん。
だって普通に考えて、
楽しいのはどっち?
話しやすいのはどっち?
ドキドキするのはどっち?
答え、出てるでしょ。
「結衣とか、無理でしょ」
はっきり言う。
ああいうのは“安心”であって“刺激”じゃない。
恋愛って、そんな平坦なもので続かないし。
少なくとも、新田くんは。
「絶対、物足りなくなる」
だから。
「その前に、もらう」
シンプル。
ペンもメモもいらない。
計画なんていらない。
だって、
普通にやりさえすれば、勝てるでしょ?
バレンタイン前日。
教室、なんかうるさい。
女子が集まってキャッキャしてるのも、男子が変に落ち着いてるフリしてるのも、全部“明日”のせい。
……ほんと、わかりやすい。
私はっていうと、別に何も変わらない。
だって、やること決まってるし!
「遠山、チョコどうすんの?」
隣の席の子が聞いてくる。
「どうって?」
「誰にあげるのって!」
「あー、それ?」
軽く笑う。
「まあ、あげるよ」
「誰にー?」
少しだけ間を置く。
「さあね?」
にやっと笑って終わり。
――言うわけないじゃん。
どうせ明日、見ればわかるし。
カバンに手を入れる。
指先に当たる、小さな箱。
コンビニで買ったやつ。
ちょっといいやつ。
でも、手作りとかじゃない。
……別にいいでしょ。
ああいうの、重いじゃん。
それにさ。
「中身より人でしょ」
小さく呟く。
重要なのはそこ。
何を渡すかじゃなくて、“誰が渡すか”。
それだけで、全部ひっくり返る。
放課後、教室を出た。廊下の窓、曇ってる。寒そう。
でもまあ、今はどうでもいい。
頭の中、もう明日のことでいっぱいだから。
――彼女いるから
思い出す。
あの時の新田くんの顔。
真面目で、ちょっと強い目。
……でもさ。
「だからなに?」
思わず口に出る。
ほんと、それ。
付き合ってるってだけで終わりって思ってるほうが、おかしいでしょ。
恋愛ってそんな固定されるものじゃないし。
むしろ――
「動いたほうが勝つし」
階段を降りながら、笑う。
立花結衣。
頭に浮かぶ。
静かで、地味で、ちゃんとしてる子。
……うん、知ってる。
悪くないよ。でも。
「つまんないよね」
ぽつり。
一緒にいて楽しいかって言われたら、どうなんだろ。
会話、続くのかな。
ああいうタイプってさ、結局“無難”で終わるんだよね。
「飽きるって」
軽く言う。断言できる。だって見えてるもん。
新田くん、ああいうのにずっと満足するタイプじゃない。
今はいいかもしれないけど。
そのうち、絶対思う。
「なんか違うな」って。
――そこ。
そこに入ればいい。
簡単。
靴を履き替えて外に出る。
冷たい空気。でも気持ちいい。
家までの道、自然と考える。
どうやって渡すか。
どうやって揺らすか。
でも正直、そんなに複雑じゃない。
「普通に行けばいいでしょ」
答え、出てる。
呼び出して。
目見て。
はっきり言う。
それだけ。
変に小細工いらない。
だって私だし。
――負ける要素、ないし。
家に着く。ドア開けて、そのまま自分の部屋に入った。
カバンをベッドに投げる。
そのまま座って、箱を取り出す。
赤い包装。シンプル。でも十分。
くるくる回して眺める。
「これでいい」
頷く。
むしろちょうどいい。
手作りとかだったら、“頑張ってる感”出ちゃうし。
そんなのいらない。
「余裕で勝てるのに、努力してますみたいなのダサいでしょ」
軽く笑う。
大事なのは余裕。
「別にあげてもいいけど?」くらいの温度。
でも。ちゃんと刺す。
そこだけ外さなければいい。
ベッドに倒れ込んで、天井を見る。
静か。
でも頭の中はクリア。
明日、新田くんは絶対揺れる。
確信。
だって。
今の関係、完成してないもん。
できたばっかり。
まだ浅い。
まだ軽い。
まるで不安定な積み木の塔みたいな。
そこに、私が入るのであれば。
――崩れないわけない。
「しかもさ」
少しだけ目を細める。
「私と比べられるわけじゃん」
笑う。
それだけで勝ちみたいなもん。
だって普通に考えて、
楽しいのはどっち?
話しやすいのはどっち?
ドキドキするのはどっち?
答え、出てるでしょ。
「結衣とか、無理でしょ」
はっきり言う。
ああいうのは“安心”であって“刺激”じゃない。
恋愛って、そんな平坦なもので続かないし。
少なくとも、新田くんは。
「絶対、物足りなくなる」
だから。
「その前に、もらう」
シンプル。
ペンもメモもいらない。
計画なんていらない。
だって、
普通にやりさえすれば、勝てるでしょ?
