『Friends』 〜 一年間の黙示録 〜

〜遠山楓理〜


二時間目と三時間目のあいだの休み時間。わたしは迷わず新田くんのクラスの教室に突っ込み、席に張り付いた。
「ねえ!」
机を指で軽く叩く。
「今日の昼休み、体育館裏来て!」
「……なんで?」
「いいから!大事な話!」
ちょっと強めに言う。だってここで濁されたら困るもん!新田くんは一瞬だけ眉をひそめたけど、結局うなずいた。
「……わかった」
よし!
これで決まり!
昼休みまでの時間が、やけに長い。でも平気。どうせうまくいくし!
だってわたしだよ?

――昼休み。
体育館裏は少し冷たい空気。人気もないし、告白にはぴったり。
先に着いて待っていると、足音が近づいてくる。
…来た!
「で、話って?」
落ち着いた顔。余裕そう。でも今日でその余裕、なくなるよ?
「単刀直入に言うね!」
にっこり笑う。
「わたし、新田くんのこと好き!」
はっきり言う。
「だから付き合おう!」

沈黙。
でも大丈夫。ちょっと考えてるだけだよね?

「……遠山」
ちょっと真面目な声。
「俺、付き合えない」

え?

「は?」

「ごめん」
「なんで?」

即座に聞き返す。

「…もう彼女いるから」

一瞬、時間が止まる。
でも、すぐに笑ってしまった。

「え?なにそれ」

「昨日、付き合った」

 淡々と。ふうん?
「誰?」

「それは」
「言えない、とか言わないよね?」

じっと見る。少し間があってから、小さく答える。

「……立花」

ほら、やっぱり。そうだと思った。
思わず鼻で笑いそうになる。

「え、結衣?」
「そう」
なんでそんな真面目な顔なの?
「いやいや、冗談でしょ?」
「冗談じゃない」
きっぱり。
「だって、わたしのほうが可愛いし!」
自分で言うのあれかもだけど、事実だし仕方ないよね。
「話も合うし、楽しいし!あの子のちょっとはいいとこあるしれないけど、地味じゃん!」
新田くんの表情が、少し変わる。
「遠山」
「絶対そのうち飽きるって!わたしのほうが楽しいよ?」
一歩近づく。距離を縮めて、私を見せつける。
「今からでも遅くないよ?別れちゃえばいいじゃん!」
「それはない」

即答。

「なんで?わたしが言ってるんだよ?」
理解できない。
「でも、俺は結衣が好きなんだよ」
その言い方、むかつく。どいつもこいつもどうしてこんなに馬鹿なの?

「は?どこがいいの?あんなの、目立たないし、取り柄――」
「やめろ」

低い声。
今まで聞いたことないトーン。
一瞬、言葉が止まる。

「結衣のこと悪く言うな」

まっすぐ睨まれる。
胸が、少しだけひるむ。

「俺が選んだんだ」

はっきりと。
「遠山と比べてとかじゃない」
言葉を切るみたいに。
「もう彼女いるから。気持ちは変わらない」
冷たいわけじゃない。でも、揺れない。
「何回言っても同じだよ」
距離を取る。
「ごめん」
それだけ言って、背を向ける。

「ちょ、待って!」

思わず声が出る。
でも振り返らない。
そのまま体育館裏から去っていく。

残された空気が、急に冷たくなる。
……ありえない。

わたしより、立花?

意味わかんない。

でも。
あの目、本気だった。

…それでも!

「……絶対、わたしのほうが上なのに」

小さくつぶやく。信じてる。


だって、わたしが一番なんだから!!