『Friends』 〜 一年間の黙示録 〜

〜水沢莉央〜


一月一日。
部屋の窓から見える街は、昨日より静かだった。大晦日の喧騒が嘘みたいに、空気は澄んでいる。窓の外に広がる冬の光は、冷たくて、どこまでも白い。

新しい年。

けれど、私の中で何かが切り替わるわけではない。
机の上に置いたスマートフォンを見つめる。通知はない。年賀メッセージも、いくつか来ていたけれど、どれも表面だけの明るさだ。

――あけましておめでとう。

おめでたい、のだろうか。
ベッドに腰を下ろし、指先でカーテンを少しだけ開ける。遠くで初詣に向かう人影が見える。みんな、願うのだろう。今年が良い年になりますように、と。

私は願わない。
願いは、裏切られることがあるから。

代わりに、ただ考える。樹との約束。
三月二十日――修了式の日。日付は、はっきりと頭に刻まれている。

もう、遠くはない。

心臓が、静かに重くなる。
怖いわけではない。少なくとも、そう思うことにしている。
怖いと認めたら、何かが崩れる気がするから。
樹はきっと、今日も普通に過ごしているだろう。家族と笑って、何も変わらない顔で。
それができるのは、強さなのか、鈍さなのか。それはきっと本人にしかわからない。

…私があの時樹を誘ったのは、私にとって正解だったのだろうか。
誰かと一緒に死ねると、安心してる自分だっていた。
でも、同時に裏切られる可能性をつくったことも事実。

本当に馬鹿。

私欲に甘えるなって言っているのに私は何をしているの?
安心したって何も変わらない。どうせ死ぬんだから。
なら何故その前にわざわざ裏切られる可能性をつくった?

…まあ考えるだけ無駄か。することはもうとっくに決まったことだし。
彼にとって正解だったのかも、もう考える必要はない。それも、もうわかった。

街を写すその窓に、私を見ようとする。暗く、(よど)んだ顔が、そこにはあった。
すぐにいつもの明るい顔をつくって立ち上がり、その顔のまま仮初めの眠気を装って、私は朝の冷え込んだドアの取っ手に手をかけた。