〜新田陽翔〜
家に帰って、部屋のドアを閉めた瞬間、どっと疲れが出た。
制服のままベッドに倒れ込む。天井を見上げると、昼間の出来事がゆっくり再生される。
――クリスマスプレゼント!
赤いリボン。やたら自信満々な顔。……やめよう。思い出すだけで情報量が多い。
机の上に置きっぱなしにしていた袋が視界に入る。透明。中身、見える。
「はあ……」
誰もいないのに、ため息が出た。
一応、もらったものだ。もう一回ちゃんと確認しとくか、と思って袋を手に取る。
リボンをほどく。中から出てくる、つやつやの写真。
――遠山楓理。ドアップ。
「……いや、まじかよ」
思わず声が漏れる。ちょっと上目づかい、謎のキメ顔。しかもポーズが妙に自信満々。
⋯いや、自信満々なのはいつもか。
写真を少し離して見る。もう一回近づけて見る。
「…なんで自分の写真なんだよ……」
普通、クッキーとかさ。せめてちょっとした雑貨とか。なんで自分をラッピングするんだ。
ベッドに座り直して、写真をじっと見つめる。
……じわじわくる。
というか、じわじわ引く。
「飾るに決まってるでしょ!」って言ってたよな。
いや、どこにだよ。
机の上に立ててみる。数秒見つめる。
「無理だろ」
即却下。
引き出しを開けて入れようとして、手が止まる。なんか、雑に扱うとあとで面倒くさそうだな。あいつ、感想聞くとか言ってたし。
スマホが震える。
画面を見ると、浅倉から。
a――今ひま?
なんだよ、タイミング良すぎだろ。俺は写真を机に伏せて、ベッドに転がりながら返信する。
n――まあ。どうした
すぐ既読がつく。
a――今日、なんか面白いことあった?
なんだそれ。意味深。俺は机の写真をちらっと見る。
n――……まあ、変なプレゼントはもらった
送ってから、やっぱ言わなきゃよかったかもって思う。
即レス。
a――誰から?
お前探偵かよ。
数秒迷ってから、打つ。
n――遠山
既読。そして、しばらく沈黙。
a――なるほど
その一言で全部察してる感じやめろ。
a――内容は聞かないでおく
優しさかよ。俺は思わず笑ってしまう。まあ言うんだが。
n――写真
既読。
……長い。
スマホを顔の上に落としそうになる。
a――え、本人の?
n――うん
a――すごいな
それだけかよ。でもなんか、笑ってるのが想像できる。
a――どうすんの
俺は天井を見つめる。どうすんの、ってこっちが聞きたい。
n――飾れって言われた
a――飾るのか?
即答できない自分が悔しい。写真をもう一度見る。キラキラしてる。自信満々。
……いや、無理だろ。
n――いや、さすがに
送信。浅倉からは少し間を置いて、
a――まあ、トラブル起こすなよ
とだけ来た。
「人をなんだと思ってんだよ……」
スマホを置く。
静かになった部屋で、写真と二人きり。改めて思う。
距離感どうなってんだ。
悪いやつじゃない。たぶん本気で善意。むしろ好意。
だからこそ、反応に困る。
写真を封筒に戻して、机の一番下の引き出しに入れる。さらにその上に教科書を置く。
「……ここならセーフだろ」
飾らない。でも捨てない。それが一番平和だ。…いや平和か?
ベッドに倒れ込みながら、ふと別の顔が浮かぶ。
廊下で、少し緊張したように笑っていた立花。ああいう好きは、静かだ。押しつけてこない。
今日のクリスマスは、なんか濃すぎた。
天井を見つめて、ひとりごとみたいに呟く。
「……写真はないわ」
部屋の電気が、やけに眩しく感じた。
家に帰って、部屋のドアを閉めた瞬間、どっと疲れが出た。
制服のままベッドに倒れ込む。天井を見上げると、昼間の出来事がゆっくり再生される。
――クリスマスプレゼント!
赤いリボン。やたら自信満々な顔。……やめよう。思い出すだけで情報量が多い。
机の上に置きっぱなしにしていた袋が視界に入る。透明。中身、見える。
「はあ……」
誰もいないのに、ため息が出た。
一応、もらったものだ。もう一回ちゃんと確認しとくか、と思って袋を手に取る。
リボンをほどく。中から出てくる、つやつやの写真。
――遠山楓理。ドアップ。
「……いや、まじかよ」
思わず声が漏れる。ちょっと上目づかい、謎のキメ顔。しかもポーズが妙に自信満々。
⋯いや、自信満々なのはいつもか。
写真を少し離して見る。もう一回近づけて見る。
「…なんで自分の写真なんだよ……」
普通、クッキーとかさ。せめてちょっとした雑貨とか。なんで自分をラッピングするんだ。
ベッドに座り直して、写真をじっと見つめる。
……じわじわくる。
というか、じわじわ引く。
「飾るに決まってるでしょ!」って言ってたよな。
いや、どこにだよ。
机の上に立ててみる。数秒見つめる。
「無理だろ」
即却下。
引き出しを開けて入れようとして、手が止まる。なんか、雑に扱うとあとで面倒くさそうだな。あいつ、感想聞くとか言ってたし。
スマホが震える。
画面を見ると、浅倉から。
a――今ひま?
なんだよ、タイミング良すぎだろ。俺は写真を机に伏せて、ベッドに転がりながら返信する。
n――まあ。どうした
すぐ既読がつく。
a――今日、なんか面白いことあった?
なんだそれ。意味深。俺は机の写真をちらっと見る。
n――……まあ、変なプレゼントはもらった
送ってから、やっぱ言わなきゃよかったかもって思う。
即レス。
a――誰から?
お前探偵かよ。
数秒迷ってから、打つ。
n――遠山
既読。そして、しばらく沈黙。
a――なるほど
その一言で全部察してる感じやめろ。
a――内容は聞かないでおく
優しさかよ。俺は思わず笑ってしまう。まあ言うんだが。
n――写真
既読。
……長い。
スマホを顔の上に落としそうになる。
a――え、本人の?
n――うん
a――すごいな
それだけかよ。でもなんか、笑ってるのが想像できる。
a――どうすんの
俺は天井を見つめる。どうすんの、ってこっちが聞きたい。
n――飾れって言われた
a――飾るのか?
即答できない自分が悔しい。写真をもう一度見る。キラキラしてる。自信満々。
……いや、無理だろ。
n――いや、さすがに
送信。浅倉からは少し間を置いて、
a――まあ、トラブル起こすなよ
とだけ来た。
「人をなんだと思ってんだよ……」
スマホを置く。
静かになった部屋で、写真と二人きり。改めて思う。
距離感どうなってんだ。
悪いやつじゃない。たぶん本気で善意。むしろ好意。
だからこそ、反応に困る。
写真を封筒に戻して、机の一番下の引き出しに入れる。さらにその上に教科書を置く。
「……ここならセーフだろ」
飾らない。でも捨てない。それが一番平和だ。…いや平和か?
ベッドに倒れ込みながら、ふと別の顔が浮かぶ。
廊下で、少し緊張したように笑っていた立花。ああいう好きは、静かだ。押しつけてこない。
今日のクリスマスは、なんか濃すぎた。
天井を見つめて、ひとりごとみたいに呟く。
「……写真はないわ」
部屋の電気が、やけに眩しく感じた。
