〜浅倉琉生〜
三時間目と四時間目のあいだの休み時間。短いはずなのに、教室は少しだけ無防備になる。僕は椅子を斜めに引いて、窓に背を預けた。外は薄い青で、冬に近づく光をしている。校庭の隅の木が、風に揺れていた。特にすることもない。次の授業の教科書は机に出してあるし、急いで確認するほど不安もない。視線をやると、永瀬が席でノートを開いている。静かだ。周囲がざわついていても、あの人の周りだけ少し温度が低い気がする。冷たいという意味ではなく、落ち着いているという意味で。その前に、水沢。椅子を少しだけ寄せて、永瀬のノートを覗き込んでいる。近い距離。でも、不自然じゃない。
「ここ、違うんじゃない?」
水沢が小さく言う。永瀬はペンを止め、視線を落とす。
「本当だ。ありがと」
静かな声。柔らかい。あの人は基本的に穏やかだけれど、水沢に向ける声は最初からずっと同じ温度だ。変わらないというのは、案外すごい。水沢は満足そうにうなずき、自分の席に戻る。短いやり取りだけれど、そこには余計な力が入っていない。
遠山の告白から約二週間。
なぜ知っているのか――簡単なことで、遠山が「永瀬が私を振ってきた」と愚痴を振りまいているからだ。...みんな聞いてはいるがほぼ相手にはしていないようだけれど。人の評価は、驚くほど早く形を変える。僕はそれを、窓際から眺めている。永瀬は水沢と並んで何かを話している。水沢が笑うと、永瀬もわずかに目元を緩める。ほんの少しの変化。でも、見ていればわかる。あの二人のあいだには、安心がある。特別な言葉も、劇的な展開もない。ただ、自然に隣にいる。
チャイムまで、あと数分。教室のざわめきは、どこか均一だ。
遠山は顔を上げない。
永瀬は静かにページを閉じる。
水沢は次の教科書を机に出す。
僕はその光景を、何の感情も誇張せずに見ている。
何の変哲もない休み時間。それぞれが、それぞれの位置にいる。それだけのこと。
やがてチャイムが鳴った。
僕は姿勢を戻し、前を向いた。
三時間目と四時間目のあいだの休み時間。短いはずなのに、教室は少しだけ無防備になる。僕は椅子を斜めに引いて、窓に背を預けた。外は薄い青で、冬に近づく光をしている。校庭の隅の木が、風に揺れていた。特にすることもない。次の授業の教科書は机に出してあるし、急いで確認するほど不安もない。視線をやると、永瀬が席でノートを開いている。静かだ。周囲がざわついていても、あの人の周りだけ少し温度が低い気がする。冷たいという意味ではなく、落ち着いているという意味で。その前に、水沢。椅子を少しだけ寄せて、永瀬のノートを覗き込んでいる。近い距離。でも、不自然じゃない。
「ここ、違うんじゃない?」
水沢が小さく言う。永瀬はペンを止め、視線を落とす。
「本当だ。ありがと」
静かな声。柔らかい。あの人は基本的に穏やかだけれど、水沢に向ける声は最初からずっと同じ温度だ。変わらないというのは、案外すごい。水沢は満足そうにうなずき、自分の席に戻る。短いやり取りだけれど、そこには余計な力が入っていない。
遠山の告白から約二週間。
なぜ知っているのか――簡単なことで、遠山が「永瀬が私を振ってきた」と愚痴を振りまいているからだ。...みんな聞いてはいるがほぼ相手にはしていないようだけれど。人の評価は、驚くほど早く形を変える。僕はそれを、窓際から眺めている。永瀬は水沢と並んで何かを話している。水沢が笑うと、永瀬もわずかに目元を緩める。ほんの少しの変化。でも、見ていればわかる。あの二人のあいだには、安心がある。特別な言葉も、劇的な展開もない。ただ、自然に隣にいる。
チャイムまで、あと数分。教室のざわめきは、どこか均一だ。
遠山は顔を上げない。
永瀬は静かにページを閉じる。
水沢は次の教科書を机に出す。
僕はその光景を、何の感情も誇張せずに見ている。
何の変哲もない休み時間。それぞれが、それぞれの位置にいる。それだけのこと。
やがてチャイムが鳴った。
僕は姿勢を戻し、前を向いた。
