『Friends』 〜 一年間の黙示録 〜

〜遠山楓理〜


今日は特別な日。だって、わたしが動くんだもの!他校との合同イベント。出ることが決まった時点で、半分くらい結果は見えていた。だって、わたしがいるんだから。成功しないわけないでしょ?ペアは永瀬くん。まあ、当然よね。頭も回るし、見た目も私には劣るけど悪くない。わたしの隣に立つには、そのくらいは必要だもの。
駅前で待ち合わせわたしが着くと、永瀬くんはもういた。ふうん。やっぱり、わたしとの約束だから早めに来ちゃうのね。
「早いね」
「別に」
そっけない返事。でもいいの。照れてるだけだし。

電車の中、並んで座る。距離は自然。わたしが窓側。景色を眺めながら、今日の流れを頭の中で組み立てる。イベントは市民ホールでのディスカッション形式。テーマは地域活性化。ありがち。でも、やりようはいくらでもある。

グループワークが始まると、他校の生徒たちは妙に遠慮がちだった。だから、わたしが空気を変える。「それ、もっと派手にできるよね!」机の上に身を乗り出す。アイデアを広げる。観光客を呼ぶなら演出が必要、写真を撮りたくなる仕掛けが必要、話題になる瞬間が必要。視線が集まる。当然。永瀬くんは横で静かに補足する。実現性とか、予算とか、具体性とか。うん、ちゃんとわたしを引き立ててる。ほら、やっぱり相性いいじゃない。
最終発表では、うちのグループが一番拍手をもらった。司会の先生も何度かうなずいてたし、他校の生徒もあとで話しかけてきた。でもね。こういうときに一番見るべきなのは、永瀬くんの反応。横目で確認すると、いつも通りの顔。淡々としてる。

でも、わかる。

内心では絶対に思ってる。

やっぱり楓理すごい、って。

だって事実だし。


帰り道、夕方の光が少しオレンジに変わっていた。駅までの道、並んで歩く。
「今日、楽しかったよね!」
「まあ」
短い返事。うんうん、そうだよね。楽しいよね。わたしと一日一緒だったんだから。
今日という日は完璧だった。わたしはちゃんと目立って、ちゃんと評価されて、ちゃんと結果を出した。そして、その隣には永瀬くんがいた。

人通りが少し減る。

風が吹いて、スカートの裾が揺れる。

...タイミングも雰囲気も完璧。

もう充分じゃない!?告白するのは今しかないでしょ!

準備してない告白は失礼とか思ってたけど、よく考えたらまず私が告白してあげる時点で失礼なわけないし、元から私が選ぶ側なんだから。

それに、もう決まってるし。

永瀬はわたしのことが好き。

あとは、わたしがそれを受け取ってあげるだけ。

むしろ、告白してあげるなんて、正直かなり優しいと思う。

わたしほどの人に想われるなんて、滅多にないんだから。

「永瀬くん」

足を止めさせる。

振り向く。相変わらず静かな目。

その視線、ちゃんとわたしに向いてる。

ほらね。

もう隠さなくていいのに。

わたしはにっこり笑う。

少しだけ顎を上げて。

「樹、わたしのこと好きでしょ?」

一拍。

返事を待たない。

だって、答えは知ってるし。


「だからさ、私が永瀬くんと付き合ってあげる!」