季節のはざまに虹を架ける

 “それ”は絶対に好機を逃さない。
 物陰に身をひそめ、薄ら笑いを浮かべながら私の心の隙を狙っている。
 ほんのすこし自分に自信がなくなって、ほんのすこし人の中で上手く暮らせているか不安になっただけで、こう囁いてくるのだ。

 ——おまえが振りかざしているものはただのわがままだ。

 “それ”は心の抉り方をよくわかっている。
 私の声を使って、あたかも私自身がそう思っているかのように、何食わぬ顔でもう一度私と溶け合おうとしてくる。
 消え去っただなんてそんなはずがない。
 反省や改善なんて自分が納得するためのただのパフォーマンスだ。
 表面的なものにしがみついている以上、固く閉ざした扉を開けない以上、“それ”は絶対私の中に在るのだと……そう囁いてくる。