食べてはいけない料理 -珍味"ハクサイ"に関する調査記録-

「取材_村山冬紀.mp3」と表記されたファイルです。
「取材_矢代卓巳.mp3」とは異なり、こちらは文字起こしされずにファイルだけが残っていたました。友人が残した資料としてはこれが一番最新のデータです。

以下は録音されていた会話内容を私自身が書き起こしたものになります。
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M「本日は取材を受けていただきありがとうございます」

村山「はい、妹のことですよね。私は一人でも多くの人に真実を知ってもらいたいのです。警察は誰もとりあってはくれませんでした。ニュースも結局はうやむやだし、もう藁にもすがる思いですよ」

M「妹さんの件は心中お察しします…」

村山「ええ」

M「では…さっそく本題に移りたいのですが、あの日、妹さんに何が起こったのでしょうか?」

村山「当日、優子は友達と飲みに行っていました。…優子はあまりお酒に強いタイプじゃなかったんです。今思えば急に「居酒屋に行く」と言い出したことを怪しむべきでした。まあでも、当時の私もそこまで疑ってたわけじゃありませんでしたよ。あの居酒屋はニュースでそれなりに話題になってましたし、そういう流行り物に乗っかった形なんだと思いました」

M「なるほど…。あの、失礼ですが優子さんの友人って…もしかして金子春香さんという方ですか?」

村山「ええ、そうです。やはり彼女も同時期に亡くなっていました。新聞にも一緒に載ってましたよね」

M 「ああ、やはり…」

村山「悲しいことです。話を聞く限りだと彼女も優子と同じような症状に苦しんだそうです」

M「その症状とはどのようなものだったんですか?」

村山「最初は発熱と頭痛でした。風邪だろうとしばらく様子を見ていたんですが、次第に強い脱力感に襲われてぐったりした様子でした。病院に行ったのはちょうどその時でしたね。病院ではコロナウイルスだと診断されましたが…次の日には昏睡状態になってしまい、そのまま入院する形になりました。その後ですね、精密検査で寄生虫が原因だと分かったのは」

M「広東住血線虫ですね」

村山「ええ、ニュースや新聞で言っていた通りです。恐らく例のハクサイとかいう料理を食べた影響でしょう」

M「ああ…。やはり、あれが原因なのですか?」

村山「多分そうだと思います。優子も春香さんも同じものを食べていたそうですから」

M「なるほど。他に思い当たるものはありませんでしたか?」

村山「春香さんから聞いた話だと…その日はハクサイの他に刺身やもつ鍋なんかを食べていたとは聞いたね」

M「そのレシートとかってありますか?」

村山「レシート…あるよ。ちょっと待ってね」


※村山さんが当時のレシートを見せてくれた。
DSC_0144.jpeg(レシートを撮影した写真)


〜レシートの内容。

飲み放題スタンダードプラン ×2 3,000円
塩昆布キャベツ ×1 350円
サワガニの唐揚げ ×1 660円
シーザーサラダ ×1 790円
和牛もつ鍋 ×2 3,100円
冷奴 ×2 660円
刺身3種盛り合わせ ×2 1,980円

計 10,540円




M「けっこう飲んでますね。このサワガニの唐揚げっていうのは…?」

村山「ああ、この辺だとよく採れるんでつまみに出してる店も多いんですよ。なにせ田舎なもんですから。けっこう美味しんですよ」

M「なるほど。あの…こんなこと聞くのも申し訳ないというか、あくまで僕の見解なんですが…」

村山「ええ、なんでしょう?」

M「サワガニって陸棲の蟹なので寄生虫の宿主になってるんですよ」

村山「は?」

M「あの、もしかしたら優子さんの死因はハクサイによるものではなく、加熱不足のサワガニの唐揚げを食べたことにより広東住血線虫に感染してしまったことが原因なのでは無いでしょうか」

村山「はあ?あんた何言ってるんだっ!ハクサイが原因に決まってるだろっ!」

M「でも、医者は…」

村山「気分が悪いわ。あんた失礼だね。もう帰ってくれ!なあ!」

M「待ってください!あともう一つだけ聞きたいことが!」

村山「出てってくれ。早く!ほら!やっぱりあんたも警察らと同じだったんだ。期待した俺が悪かったわ」

M「ごめんなさい、帰ります。帰ります」

村山「なあ、まだ撮ってんだろ?撮ってんだよな?ふざけやがって。二度と優子をバカにするんじゃねえ!」

M「すみません。レコーダー止めますからっ!あっ、痛い。やめてください!痛っ!」

村山「優子はなあ!タイソーエィのところに行ったんだよ!きっと幸せなんだよ!それなのに、それなのに!ああああああああああああ!!」

M「はい…はい…すみません、すみません」

村山「皆、そうやってバカにする。ああ、ああ、ああっ!このテレビ局の回し者め!」

M「痛い。痛い。げほっ、げほっ!クチャ、クチャ。ごめんなさい、ごめんなさい。おえ、げほっ!けほっ!帰ります、帰りますから」

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