死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ここが人目の多い場所だなんてことは、1mmも頭になかった。

 大きな歓声に周りの人がぎょっとして、ヤバイ奴だとそそくさと避けていく。
 目の前の男でさえビクッと驚いて、口をあんぐりさせていた。

 私に向けられる、冷ややかなものを一切意に介さず。やったーと喜びを爆発させた手を下げて、男の方に向けた。

「さぁ、どうぞどうぞ! スパッとやっちゃって下さいよ。私、嫌だーなんてごねたりなんかしないからっ」

 空想の中での私は、バチッとウィンクまでしちゃってる。

 興奮冷めやらぬ。早口も止まらずに、さぁ早くと催促までする。

 きっと死神の立場からすれば、真逆の反応に困惑したと思う。悲しみさえすれど喜ぶなんて、と。
 しかし最初こそ呆れた顔をしていた男だったが、平静を取り戻して、また冷淡を宿した目になった。

「ま、泣き喚かれるよりかはよっぽど楽か。望み通り、さくっと狩ってやるよ」

 そう言うと、右手を胸の高さまで上げる。軽く何かを握るように指を曲げると、その中に黒い靄が現れ始めた。
 やがて印象的な物に形作られ、それまで何もなかった手に細長い柄が握られた。

 ――男の身長程ある、大きな鎌。
 それは死神の概念とも言える。

 柄も、独特の湾曲した刃も黒いそれは、想像するそれに完全に一致していた。

 恐怖の象徴でもある鎌がくるりと回り、構えられる。
 今にも魂を狩らんとばかりに。