死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 両脇にネモフィラが咲き広がる道を歩き、少し小高い丘に登る。登った所は芝生が生える広場があり、ここはフリースペースになっていた。

 バドミントンをして遊んでいるグループ。持ってきた飛行機のおもちゃを飛ばし合っている親子。
 それぞれがそれぞれに過ごしている中、私達は大きな木の下にやって来た。

 広場のわりと端っこまで来たので、近いところに人の姿はない。梅雨の晴れ間の今日、6月の気候はもう暑く、木の下はちょうどいい日陰になっていた。

 この木、桜なんだ……。

 大きく立派な幹を見上げながら、春になれば綺麗なんだろうなぁと想像していると、名前が呼ばれた。

「花ちゃん、ここでいい?」

「あ、うん。ごめん。ここで大丈夫だよ」

 我に返り返事をして、ランチバッグの中からレジャーシートを出す。

「これ敷くから、座って」

 幼稚園の頃、遠足に行くのに買ってもらった物。当時の流行りの魔法少女が描かれたシートは、今となって使うには抵抗がある。けれどこれしかなかったので、恥を忍んで広げた。

 靴を脱ぎ、先にシートに座れば、フェルは理解したよう。同じようにブーツを脱ぐと、私の隣に腰を下ろした。

「お昼になるの、ずっと楽しみにしてたんだ」

 うきうきと言ったフェルに、念の為に伝えておく。

「私なりに頑張ったけど……。あんまり期待しないでね?」

 ハードルは下げておいた方がいい。
 そうじゃなくても、フェルが抱く私のお弁当への期待値がハンパないから。

 鞄の中からそっとお弁当箱を出す。ついにこの時がきたと。不安で、さっきから心臓がずっとドキドキ鳴っている。

 わくわくと、期待に満ちた目を向けられながら、意を決して、そっと蓋を開けた。

「カパッ」

 普段気にもしない小さな音が、妙に大きく聞こえる。1段目に詰めたおかずが見えて、フェルの体が前のめりになった。