死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 フラワーパークの中は思った以上に広かった。ぐるりと円を書くような敷地に、所々見所が用意されている。
 色んな色のチューリップが咲く場所があれば、カーネーションで人気のキャラクターが描かれていたり。バラが巻き付いた柵で短い迷路があったり、藤のカーテンを潜れると言った場所もあった。

 これが無料で解放されている場所とは思えないクオリティで、普段花に興味がなくても、心奪われる瞬間が多かった。

「わぁ。ここも凄く綺麗だね」

 大きく、優美な花を開かせるシャクヤク。それが一面に広がる景色は、圧巻さえあった。

 立てば芍薬なんて言葉があるけど、その意味が今なら分かるかも。

 それくらい綺麗だった。つい黙って眺めていると、隣にフェルが立つ。

「花なんて死神には必要ないし、見ようと思ったことすらなかったけど。こうして見ると綺麗だね」

「うん」

 短い会話を交わして、しばらくふたりでシャクヤクのエリアを見て回る。
 すれ違ったカップルがひとりで来てるの? 幽霊みたいと、私に向けた言葉が聞こえてきて、没入していた世界から戻ってきた。

 ……そうだよね。
 皆の目からは、私の姿しか見えていないし。
 どれだけ服装をオシャレしたって、見た目の幽霊さは変わってないもんなぁ……。

 周りから見れば私はぼっちな幽霊。ひとりで喋りながら、パークを回っている不気味な女。

 改めて死神の意義を痛感していると、ねぇねぇと声を掛けられた。

「少し早いけど、お昼ご飯にする?」

「え? もうそんな時間?」

 まだ着いて、そんな時間が経った気がしないけど……。

 そう思いながらもスマホで時刻を確認すると、11時30分になろうとしている。

「もうお昼前だったんだ」

「ゆっくり見て回っていたとは言え、時間が経つの早いよね」

 フェルも私と同じような感覚だったのだろう。苦笑しながら言う。

「お昼にしよっか? 私はいいよ」

「じゃあそうしよう」

 見て回っている内に慣れてしまった、繋がれた手を引かれる。このパーク内を把握しているような迷いのない歩み。
 何処に行くの? とは訊かずに、フェルに連れて行ってもらおうと身を委ねた。